内容説明
人類の歩みは絶えざる病との格闘であった。患者への温かい眼差しをもって治療に当たり、医療・医学の根源からの探究を志した病理学者が、人間の叡智を傾けた病気克服の道筋とそのドラマを追う。興味深い挿話、盛り沢山の引例、縦横に飛ぶ話柄。該博な知識と豊かな教養をもつ座談の名手が、洗練された名文で綴る人間味溢れる新鮮な医学史。(講談社学術文庫)
目次
推薦のことば 酒井シヅ
第一章 人類と医学のあけぼの
第二章 イオニアの自然哲学とヒポクラテス
第三章 アテナイの輝きとアレクサンドリアの残光
第四章 イエス、ガレノス、そして中世
第五章 インドと中国の古代医学
第六章 シリア人とアラブ人の世界史的役割
第七章 芸術家と医師のルネサンス──中世からの「離陸」
第八章 科学革命の時代
第九章 近代と現代のはざまで
第十章 進歩の世紀の医師と民衆
第十一章 西欧医学と日本人
第十二章 戦争の世紀、平和の世紀
「解説」にかえて 佐々木武
あとがき 廣川勝いく
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
65
医学は哲学や心理学との親和性が高い。現代に至るまでどれだけの先人の研究と発見の積み重ねがあったかという点が理解でき、読みものとして面白かった。2019/10/20
ボル
10
まさに「医学の世界史」的な内容であった。病院での治療行為からの話と思いきや、神頼みやサルによる舐め合いからの歴史感はとても壮大であった。日本人が著者だけあって日本の医療についても触れられている。2018/11/17
刳森伸一
8
古代から現代にかけての医学の歴史。作者の博覧強記が冴えわたる快著で、医学の歴史を概観できると同時に、読みものとしても面白い。広範な歴史を扱っているため、特に近代以降は駆け足で説明されていて多少物足りないが、古代から中世または近世あたりまでは見事だと思う。2017/05/03
K.
8
医学と社会は結びついている印象を持った。各々の時流に沿って医学も左右されるような。あるいは逆かもしれない。「医学」というテーマ史としても面白いし、随所に世界史のエッセンスともいうべきことが記されていたり、医学以外の幅広い分野の著書も引用されていて、まさに叡智の結晶のような1冊だ。「医学は社会科学であり、政治とは大きな規模における医学なのだ。(フィルヒョウ)」2015/01/30
ikatin
7
全体の流れを概観するには格好の書。個人的には特に近世日本医学史の部分がやはり興味深かった。こうしてあらためて見直すとベルツ博士の「日本人はその成果を生み出した精神を学ぼうとしない」という言葉は重いです。急逝され完成稿でないとはいえ、非常に示唆に富む記載が多く、大変勉強になりました。ただ、おそらく梶田先生は第12章の後にもう少し書き加えたかったという思いがあったのではという気がしてなりません。2010/04/17
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