内容説明
ブッダの直弟子たちは次々と「悟り」に到達したのに、どうして現代日本の仏教徒は真剣に修行しても「悟れない」のか。そもそも、ブッダの言う「解脱・涅槃」とは何か。なぜブッダは「悟った」後もこの世で生き続けたのか。仏教の始点にして最大の難問である「悟り」の謎を解明し、日本人の仏教観を書き換える決定的論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
87
「ブッダの教えとは人間として正しく生きる道を説いたものなのか?」と著者は良く言われる仏教の解説に疑義を示す。では仏教とは何なのか?つまり仏教の「ゼロポイント」を探り、解説するのがこの本である。簡単に言えば、ブッダが解脱し涅槃に入ることを目的とした事が始まりなわけだが、そのプロセスに色々あったわけで。超個人的な解釈で暴論を言えば、仏教とは正に中道であり、イエスともノーとも言わない境地。そして解脱を得た「覚者」がそれを黙っていようが教えたい人にだけ教えようが、自由であったから宗派が沢山あるという説も面白い。2019/08/03
booklight
54
非常に面白い。仏教の根本って何?を大乗仏教ではなく上座部仏教から解説。そもそも仏教は悟りを目指すもので、現代人の人格の完成を目指す宗教ではない(笑)。仏教の基本は縁起と四諦。世界に主体はなくすべて関係性でできており、生きていくことは苦である。その苦から逃れるには、その事実を理解し、善悪・煩悩から離れた世界の見方を体得すること。これが涅槃。涅槃自体は、言語を超えた現象なので説明はできない。悟り以外の布教などは「遊び」!という、ブッダのラディカルさとそれ以外(民の救済も)は尾ひれという事実にびっくりも納得。2020/01/18
harass
48
すでに日本人には手垢のついた宗教であり思想でもあった仏教の、根幹部分を語る。明快極まりない語り口でブッダの語った涅槃や悟りとは何のことなのかを解説する。現代思想を読むような刺激的でスリリングな知的興奮を得られた。早く文庫化を求める。『現代風にわかりやすく表現すれば、ようするにゴーダマ・ブッダは、修行者たちに対して「異性とは目も合わせないニートになれ」と求めているわけで、そういうあり方のことを「人間として正しく生きる道」であると考える現代日本人は、控えめに言っても、さほど多くはないだろうということである』2015/11/23
zirou1984
45
これは面白い。世界三大宗教と言われながらその教義は幅広く、親しみやすいようで捉えどころのない仏教についてその起源から考える入門書。著者は仏教の本質を「その教えの説者が、「物語の世界」の外部の視野を、自ら有している」ことと定義し、悟りとはそうした苦痛や快楽の原因となる物語の世界―対称にイメージを付与してしまうものの見方―から解き放たれることと説明しているのはわかりやすい。他にも輪廻というものがいま・この瞬間にも生起し続けている話など、用語を丁寧に噛み砕きながら興味深い内容を教えてくれている。2015/08/22
デビっちん
33
今まで解脱したら、この世から消えてなくなってしまうと思っていました(苦笑)そういう程度ですので、なんとなく今までふわふわしていた解脱、涅槃という言葉の意味がわかった気がします。無為の涅槃の覚知、その特異点での神秘的な体験を求める人が絶えなかったから仏教は2500年も続いていたんですね。2018/05/12