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内容説明
日中・日韓関係を極端に悪化させる歴史認識問題。なぜ過去をめぐる認識に違いが生じるのか、一致させることはできないのか。本書では、韓国併合、満洲事変から、東京裁判、日韓基本条約と日中国交正常化、慰安婦問題に至るまで、歴史的事実が歴史認識問題に転化する経緯、背景を具体的に検証。あわせて、英仏など欧米諸国が果たしていない植民地支配責任を提起し、日本の取り組みが先駆となることを指摘する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
108
幾度となく繰り返され、日本が矢面に立たされる「歴史認識」。いつまで謝り続けなきゃいけないのか?我々が生まれる前の事なのに。しかし筆者は説く。国民の多くは先の戦争は重大な過ちで、三百万同胞を死なせてしまったことを悔い、必死に働き、荒廃から僅か半世紀で平和で繁栄した国を作り上げた。ただ、そこには近隣諸国に与えた惨禍を思いやる十分な余裕はなかった。豊かな国を継いだ我々は、合わせて負の遺産である近隣諸国への道義的責任を引き受け、問題を解決し次の世代に引き継ぐ義務がある。本書の主題ではないが覚悟を迫られた気がする。2019/11/09
Shoji
73
日本軍が過去にやったこと。国際法に違反する侵略。その過程での虐殺などの非人道的行為や深刻な人権侵害。朝鮮植民支配の時代に朝鮮民族に強い屈辱感を与えたこと。それに対して、戦後やったこと。講和条約、賠償協定、国交正常化条約等に基づく賠償支払いや賠償に代る経済協力。先の大戦で日本は三百万人の人が犠牲になったという。しかし、日本が戦場とした中国・東南アジアでは三~五倍の人が日本軍に殺されたという。いつも思う。先の戦争で日本は加害国か被害国か。今なお、もやもやしている。2017/03/12
nnpusnsn1945
59
小倉紀蔵先生がサイトで紹介されていたので読んでみた。歴史認識についての基本がおさらいできる。著者は日本の問題についてしっかり指摘している。俗人の視点は卓見である。一方で、挺対協との軋轢に触れたり、慰安婦にされた女性の中に「性奴隷」の名称を好まない人もいると言っている。また、インドネシアの関係では、日本軍に対する称賛が間違い(正確には少数派)であるとしつつも、そうであったらだったら良かっただろうなと思うと述べている。ネット上では両方向から叩かれそうだが、事実はそう割り切れるものではないので的を射ている。2021/12/11
もりやまたけよし
48
徴用工だとか慰安婦、東京裁判など微妙な論点をどう考えたらいいのか。わかりやすく、納得できる論理で説明してくださり、とかく感情的になりがちな気持ちを冷静に考えることができそうです。2019/11/29
おさむ
43
従軍慰安婦や東京裁判、戦争責任といった現代史のテーマを学ぶのには最適の書。国際法学者で、慰安婦問題の解決に尽力された大沼さんの言葉には説得力があります。通底するのは人間は理想通りには生きられない。欠点も飲み込んで生きていくほかないという哲学。東南アジアで対日感情が良いのは戦時中に諸国を開放したからといった誤った認識が広がっている現状を嘆いています。世界で人権意識が高まってきたことが歴史認識問題が再燃している構造的な要因。日本には戦後の罪悪や不利益に責任をとらず放置してきた「戦後責任」があるとしています。2018/05/25