内容説明
御朱印船貿易の時代、アジアの国々を往来した多くの日本人たち。彼らにとって、海は未知の世界への入口であり、一攫千金の夢をかなえる場所だった――寛永十(1633)年、「鎖国令」が発せられるまでは。
瀬戸内海に浮かぶ小さな島に生まれ育った、高取大介・次介兄弟。父親が遺した借金のために傾きはじめた家の経済を立て直そうと、兄・大介は茶屋船(朱印船)に乗り込む決意をするが、出港地・堺湊への船中、激しい船酔いに襲われ、替わりに弟・次介が広南国(ベトナム)へ向かうことになった。異国への旅に心踊らせる次介。面目を失い長崎に出奔した大介はある時、日本人の渡航・帰国を禁じる鎖国令が発せられることを知り、波濤の先の弟の許へ旅立つ。離ればなれになる程に強くなる兄弟の絆。兄弟に想いをよせる美しい姉妹。さまざまな過去を負う海の男たち......煌めく海洋を舞台にくりひろげられる人間ドラマ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケロリーヌ@ベルばら同盟
50
瀬戸内で花の名所として名高い高取島。桜の時期には薄紅の花霞に浮かぶこの島の名主の子として生まれた太郎と次郎の兄弟。太郎は亡父が島民の難儀を救う為負った借財を返済せんと愛する島を、身分を捨て、茶屋船の水夫となる決心をする。虚弱な兄を案じた次郎は、身代わりに波涛の彼方へと旅立つ。折しも世は二代将軍秀忠から家光へと移り替わり、海外との交易、文化・宗教の移入に著しい規制が生じる時代。人の往来もまた…。兄弟の絆を軸に、鎖国政策の功罪、歴史の転換の陰の庶民の悲哀が描かれる。ベトナムと高取島の桜が共に海に舞う終焉に涙。2019/05/24
ミーコ
50
久々の平岩さん、絶対面白いはず・・・と思って読んだのですが、最後か尻すぼみっぽい終わり方でした。幼い頃ヤンチャだった弟 次介が 船酔いする兄の代わりにベトナムへ渡ったのに、何故 こう言う結果に❓…と憤りを覚えました。兄は故郷に帰り 幼馴染みと結婚、子供までもうけたのに弟が可哀想でなりません。 どうせなら兄弟一緒に村へ帰って欲しかったです。幸せな結末を予想してただけに悲しい気持ちになりました。2016/01/18
007
30
★★★☆☆ 話はもたついてるし唐突だったり強引だったりで、ベテランの平岩弓枝さんらしからぬ作品だった。鎖国令は外国にいた日本人の帰国も禁止(死刑)だったのは知らなかった(習ったんだろうけど記憶にない)。2015/08/04
さら
26
兄弟愛をひしと感じました。つらつらーと読めてしまったので、それなりに面白かったです。わりとあっさりしているというか、突き詰めない形で話が進んでいくような印象です。展開に分かり難いところがあったけれど、それは想像力で補うことにしました(苦笑)2015/09/25
柔
20
瀬戸内の高取島で生まれた大介と次介。親の借金返済の為に、弟の次介は商売の為にベトナムホイアンへ向かう。婚約破棄された大介も弟を探す為、後を追う。渡航する過酷さは伝わった。鎖国時代海外にいた日本人の入国も禁止され兄弟は寂しい末路を辿る。以前訪れたホイアン日本橋を回想して読んだが、ホイアンでの話はほとんどなし。ちょっと思ってたのと違った。2021/04/22