内容説明
奇跡といわれた日本の戦後復興と高度成長。その理由は「昭和33年」に凝縮されていた。この年ただ一度の東都大学野球リーグ一部優勝を遂げた、学習院大学硬式野球部。戦禍で家族を失い、恵まれぬ境遇の選手たちを支えたのは、創意工夫と不屈の魂だった。そして大学野球の奇跡を観客席で見届けた皇太子殿下にも、ひとつの奇跡が起きていた。昭和の時代を描き切ったノンフィクション作家、門田隆将の〈野球三部作〉ここに完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
thee birdmen
17
昭和33年11月、奇しくも同じ年の同じ月に起こった皇太子ご成婚と学習院大野球部の東都優勝。その偶然を必然の奇跡として描いている本。コツコツと苦難を乗り越えていく日本人の逞しさが描かれています。特にPL野球部の祖・井元俊秀氏の生き様は素晴らしいです。特待生制度の裏にカネの問題はありますが、選手の才能を伸ばし、甲子園・プロへと導く環境づくりも大切なのは間違いありません。高い志のもとで何事も成し遂げようという日本人の真髄に触れた気がします。2015/11/29
こういち
15
様々な境遇を持った人たちが、何かに導かれるが如く邂逅しながら歴史は編まれていく。それにしても輝かしきかな昭和33年。まさに日本の奇跡的な経済成長を遂げていく幕開けとなる。この作品で取り上げられる学習院大学の東都リーグ1部優勝と今上天皇のご婚約決定に至る軌跡は、軽妙な語り口でありながら読み手のツボを刺激する。「希望を持って挑めば道は拓かれる、そして自信のないところには実現性はない」という熱き言葉に、果てることの無い、物事を為し得るための未来への階を見た。2015/09/24
takam
10
高度経済成長期に差し掛かるとき、皇太子の結婚、学習院大学野球部の優勝と日本の当時の活力を感じる。絶対に成し遂げることができないといわれた学習院大学野球部の優勝は戦時中や戦後の混とんとした中を生き抜き、野球や生きていることを楽しんでいるように思えた。少年漫画を読んでいるような爽快さがある。2020/11/14
hippos
8
かつて大学野球がここまで盛り上がっていたことに驚き。目白に住んでいたこともあって学習院の優勝の場面では目頭が熱くなった。 映画などで昭和三十年代がノスタルジックに甘く描かれることが多いけれどそこには壮絶な戦争体験をもつ人が生活していたことを忘れてはいけない。2015/10/07
shouyi.
7
表題を見て6大学野球かと思ったが違っていた。東都大学リーグの話である。その東都大学リーグで学習院大が昭和33年秋に、まさに奇跡的に優勝するというノンフィクション。その経緯もおもしろいが、単なるスポーツ読み物で終わっていないところが更にすばらしかった。2019/12/25