内容説明
伊藤計劃が2009年にこの世を去ってから早くも6年。彼が『虐殺器官』『ハーモニー』などで残した鮮烈なヴィジョンは、いまや数多くの作家によって継承・凌駕されようとしている。伊藤計劃と同世代の長谷敏司、藤井太洋から、まさにその影響を受けた20代の新鋭たる柴田勝家、吉上亮まで、8作家による超巨大書き下ろしアンソロジー
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆかーん
57
充実感たっぷりの一冊。この一冊にSFの全てがある。この先の未来は、戦いと高性能機械に蝕まれた、自由意思のない世界に成り果ててしまうのだろうか…。『選択』の意志を失ったこの先の人類は、自己の生存を奪われ、魂の尊厳を問われる中で生き続けなければならない。『人間は行き詰まっている』。『死』を受け入れることのできない彼らは、『脂のキューブ』や『緑色の粉末』を手に入れ、『自由意志』の中で死んで行こうとしている。人工知能やAIに個人の『意識』を奪われぬように、人間としての『精神』を守りながら、己を保ち生きて行きたい。2015/12/20
とくけんちょ
49
もの凄い読み応え。名だたるSF作家たち8名による共演。故伊藤計劃氏に刺激をうけた作品たち。どれもこれもじっくりと腰を据えて読みたい作品ばかりだ。あとは好みの問題ですが、未明の晩餐、フランケンシュタイン、怠惰の大罪が読み応えがあった。特に晩餐は五官に訴えてくるような凄みがあり、怠惰には唸らされた。すべての作品に重みがあり、覚悟を決めて読む必要があるが、読んで損なし。2021/11/09
絹恵
48
言葉によって器官が刺激され、まぶたの裏側の憧憬も、頬を伝う熱も言葉に変わる。それは記号としてではなく、紛れも無く感情のある言語だった。しかし言語化出来ない部分、行間にこそ、宿るものがあるのなら、それを求めるためにやはり私たちは加速することを選択するのだろうか。好みは、「仮想の在処」、「ノット・ワンダフル・ワールズ」、「怠惰の大罪」。2017/04/10
カザリ
41
う~ん、誰も言わないけれど日本のSFってどうなんだろう。。というか、言われていることを私が知らないだけなのかな。。この本で出だしからストレスなしで読めたのは伴名錬氏のもののみだった。それにしても、文体はすごい、と思うんだけど、内容がなんだろう、正直魂と意識の有無をめぐって、感情的に決起して、冒険をするインパクトがあるかって言われるとすごく、どうなんだろうって思うってしまうんだよなあ。文体と構成力はすごいんだけど、これ、面白いのか、ってやっぱり思っちゃう。。みんな、今のSFに納得してるのかなあ。2016/12/12
ソラ
37
満足度の高いアンソロジー。藤井さんのはPSYCHO-PASSでも似たような場面があったような…。特に吉上亮さんのはシリーズ化してほしいなと思えるぐらい良かった。他にも柴田さん、長谷さんのは印象的。2015/09/20