内容説明
【第15回柴田錬三郎賞受賞作】家業の薬売りを手伝うために妻の静佳とともに富山に戻った麻史は、祖父が残した書き付けから「曼荼羅道」の存在を知る。祖父の蓮太郎は戦時中マレー半島に渡り、部族の娘サヤを現地妻としたのだった。現代を生きる麻史と静佳、戦後を乗り越えてきた蓮太郎とサヤ。二組の男女の人生が、やがて「曼荼羅道」で交錯する。圧倒的な迫力と濃密な筆致で描く家族、愛憎、そして性。傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
21
戦前のマレイ半島。販路の拡大に訪れた富山の薬売りの蓮太郎は、土地の娘・サヤと出会い愛し合う。終戦後、サヤは蓮太郎を頼って命からがら富山へたどり着く。一方、蓮太郎の孫である麻史は、妻の静佳ともども職を失って富山へ帰郷する。<蓮太郎―サヤ>と<麻史―静佳>の二組の男女が時空を超えてめぐりあう曼荼羅道、それは鬱蒼とした緑に覆われた時空の裂け目。アニミズムに満ちた精霊の森がマレイと富山を結ぶ。戦前―現代―未来を通じて変わることのない、男と女の深い因業、争いを無くすことの出来ない人間の宿命がひたすら重い。2016/05/09
ロマンチッカーnao
19
すごかった。地獄です。曼荼羅道が示すものは地獄です。坂東さんが地獄を描きたかったのかはわからないけど、僕には地獄にしか思えませんでした。過去も未来もない。どこにもたどり着かない今を過ごしてる。過去何をしていたのかわからず、行き先はわかっているけどどこにあるのかわからない。ただただ曼荼羅道を歩いている。僕には地獄にしか見えなかった。怖いほどの描写力。水曜日の凱歌でもそうだったけど、戦後の混乱期は戦中と変わらない苦しみだったようですね。麻史が立枯病ならば、今の日本人のほとんどがそうでしょう。ぜひ読んでほしい。2024/06/10
練りようかん
15
柴田錬三郎賞きっかけ。引揚船に乗り富山まで辿り着いたサヤ。相当な覚悟は伝わるが本当のところの感情は見えず、物語は戦中戦後と孫夫婦の現在を行き来するのだが、祖父と同じ薬売りになるための移住や、人生のパートナーとしてなど孫夫婦其々の胸の内はわかるも覚悟が伝わってこず、対照的な描き方が興味深いなと思った。妻はサヤに関心を持ち、夫は祖父の記録した曼荼羅道に迷い込む。二つの時間軸が交錯する、とも読めるし過去という海に現在が半身浸かるようにも読めて、幻視と惑いと罪深さが密であった。黒岩重吾氏の講評も良かった。2025/10/08
外枠発走
15
文学賞受賞作。現代と過去を上手く融合させ、男女の情念を描いた物語。著者の作品の好きなところ。全体を通して完成度は高いものの、ちょっと贅肉というか、不必要と思える部分が多々あり、著者特有のネットリした文体と相まって、少し読み難さを感じた。2012/01/12
湖都
13
感想を著すのが難しい。失業して実家の富山へ戻ってきた麻史と妻の静佳、麻史の祖父で富山の薬売りだった蓮太郎とそのマラヤの現地妻のサヤ。4人の視点を通して、男と女の生き様が曼荼羅道で交差する。ルーツ探し系の話かと思って読み始めたが、気づけば世にも奇妙な物語風になり、ホラーっぽくもなり、ファンタジーでもある。4人の中ではサヤ視点が1番物語めいていて面白かった。結局何が一番言いたかったのか、それぞれの視点ごとに違う気がして、なんとなくとっ散らかったまま終わってしまった印象。とりあえず、静佳は良くない。2019/06/04




