内容説明
母親と死別した坂崎莉実は、父親と二人暮らしの高校二年生。ある朝目覚めると父親の姿はなく、代わりに「うちの保険証を使って、彼女を莉実として病院へ入院させてほしい」という不可解な書き置きとともに、見知らぬ少女がいた――。本名を名のらず、やむなくリミットと呼ぶことになった少女は、どう見ても年下なのに莉実の身のまわりで起こった奇妙な出来事の話を聞くだけで、見事に謎を解いてしまう。不思議に大人びた彼女は、いったいどこの何者なのだろう? 莉実とリミット、二人の少女が送る、謎に満ちたひと月。心温まる連作ミステリ。/解説=大矢博子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
したっぱ店員
49
日常の謎+安楽椅子(というかベッド)探偵ものに、この作者らしい、少し不思議を織り込んである。細かい謎ときの方はともかく、後書きにもあるように大きい要素の方は十分想像がついてしまう。しかし、わかっていながらもラストのシーンにはじんわりと沁みるものがあった。一昔前の少女小説の趣も感じられ、上品で好きな作品。2015/11/15
coco夏ko10角
34
莉実とリミットのやり取りがいい。なんとなくわかってたけど、それでもなおエピローグがとてもよかった。2016/10/24
masa
28
とても良かった!頂いた本。ある朝を境に、彼女の世界は一変する。謎の少女、父の失踪、開かずの部屋…。病気の少女を治すために仕組まれた、計画。ひと月の彼女との触れ合いは、奇妙で、謎めいていて、ある予感を思わせる。想いは言葉にしなくても、何かしらの形を帯び、輪郭を浮かび上がらせて行く。いや、言葉にしないからこそ、なのか。作者の意図した道標を辿りながら、行き着く先の想いが切なく、どうしようもなく愛しい。最後の最期まで、人の想いと愛の強さが光る。これは、単純なミステリじゃない。人の想いを巡るミステリだ。解説も素敵。2017/03/20
あやっぴ
27
知人からお借りした本。父親と2人暮らしの17歳の娘だが、ある日いきなり父親が姿を消してしまう。おまけに書き置きとともに見知らぬ少女を置いて…。残された娘とその少女が日常のミステリーを解決しながら交流を深めていく話?だと思うのだが、私にはちょっと入り込めず。ごめんなさい。2022/06/29
タカギ
26
著者のタイトルのセンスが好き。他にも好きなところはあるけど、最後まで読んで、なるほどそういう意味だったのね、と深く頷けるところが良い。可愛いらしいタイトルだし、装幀もほんわかして児童書?と思わせつつ、心の機微を絡めた連作ミステリで、最後はちょっとうるっときた。リミットが何者かが比較的分かりやすいのは、ハッキリ書かないぶん、わざとなのだと思う。お父さんが帰って来て、父娘でどんな会話をしたか読者が想像する楽しみもある。2022/07/24