内容説明
雨の夜、市議会議長が殺害された。波山署の本宮は県警捜査一課の若手・平原優子と組み捜査にあたるが、意外な容疑者が浮かび上がる。その影を追ううち、本宮たちは一人の青年の心の闇に出会う――。80年代のバブル経済に呑み込まれた男女と、それを見つめた彼らの子どもたち。ある家族の崩壊と殺人事件を通して、時代を生きる人間を鋭く描き出す、傑作刑事小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
178
幾つか作者の作品を読んだ今、本作は正直言って長く感じた。じわりじわりの真相解明は面白くはあったけれど…犯人捜しは早めに怪しい人物の影がちらついてはいたが動機が緩いかと。人が崩れる時、家族が壊れる時、壊れて更に粉々になると思うと、どうにも私の胸を乾ききって底冷えする風が砂塵を巻いて吹き続けるような、そんな感じがした読書だった。『殺人を犯したのは27歳の大人だ。だが、父親の罪を告発したのは16歳の少年だった。』なんだか苦しい。犯人の妹や被害者の娘の感情が虚しくも怖ろしく感じた。2021/04/20
アッシュ姉
81
バブルの余波で家族が崩壊。やがて殺人事件へと結びついてしまうやるせない話ではあるが、ベテラン刑事と若手女性刑事のコンビが少しずつ打ち解けていく様子が微笑ましく救いとなった。主要人物から脇役にいたるまで背景が細かく、それぞれの人間ドラマが濃く絡み合う。真相を追うほどに闇が深まり、最後まで全容は見えてこないが、焦らされている感はなく読ませる。惜しむらくは犯人の胸の内が分からないので動機が弱いと感じたこと。疑問点もいくつか残されたままでもう少し補足が欲しかったが、単行本からの大胆な改稿は正解だと思う。2020/02/07
キムチ27
61
漂題が述べたい意味合いは判るのだが、今一つガスがかかっている。最初に敷いた布石を潰していく過程もなんか盛り下がる。期待してはいけないが最近の筆者の骨太作品を読んできているだけにかな。直前に読んでいた清張とつい比較するからかな。本宮・優子コンビが徐々に距離が近づき 肝胆相照らす感じになって行くのはいいけど 優子さんの「美しさをほめちぎる」箇所が多すぎる(笑)一回聞けば結構。美嘉と美優・・意識かの名づけだろうが逆に焦点が曇る。山口兄弟、被害者との世代を重ねた恨み、粘りつく狭い地域のマイナスの面がよく見えていた2020/06/24
冴子
40
家庭が崩壊した話が冒頭にあり、それが誰の話なのか? 刑事コンビの二人にはそれぞれ事情があり、人間味が溢れている。一般的なミステリーだが、最後まで読んでも殺人の動機が余りはっきり解らないのは私の読解力のなさか? 被害者の出来の悪い息子とか、被疑者の母が語らない話とか、結局読み解けなかった気がする。再読しなければ。筆力のすごさは相変わらず塩田さんらしい。2019/01/15
ぴろち
32
うーん。2017/04/23