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内容説明
「読書は自分で考えることの代わりにしかならない。自分の思索の手綱を他人にゆだねることだ」……。率直さゆえに辛辣に響くアフォリズムの数々。その奥底には、哲学者ショーペンハウアーならではの人生哲学と深いヒューマニズムがあります。それが本書の最大の魅力です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
147
まあまあよかった。テーマのとおりだけど、読書を手放しで礼賛するような本ではなく、むしろ何も考えずに低俗、中身の薄い本を読むことは他人に思考を委ねることで、やるべきではないと主張。むしろ本を読むよりも自分の頭で考えることの重要性を説く。中盤はおもにドイツ語の文章の乱れについて書かれているので流し読み。最後の解説が意外と面白いし、ショーペンハウアーがどうして此のような主張をしているのか、その社会的背景だったり自分の経験などがかなり影響していることが伺い知れる。2020/12/27
ねこ
137
光文社古典文学文庫の読了はこれが2冊目。とても読み易く訳者の深い造詣と愛が感じられました。本書は「自分の頭で考える」「著述と文体について」「読書について」の3編を「余録と補遺」から抜き出し、現代文と多くの訳注で纏められています。この3編もいいのですが、解説でショウペンハウアー師の生涯が20ページ以上書かれていました。トルストイの書斎に唯一、ショーペンハウアーの肖像画か掛けてあった事や、ニーチェが古本屋で彼の本を見つけ寝るまも惜しんで没頭した事など偉人は繋がっているのだと感じました。古典文学は奥が深いですね2023/01/22
アキ
112
「自分の頭で考える」「著述と文体について」「読書について」の三篇。1851年『余禄と補遺』刊行。主著『意志と表象としての世界』の注釈。年間冊数を目標に掲げている身には耳の痛い諫言。「多読に走ると、精神のしなやかさが奪われる」戒めとしながらも、本を求めるのはやめられない。「言葉は芸術作品であり、芸術作品として客観的に受け止められるべきだ」そう感じることもある。「なによりも物書きの悪行の盾となっている匿名性が廃止されなければならない」現代のSNSに通じる。「反復は勉学の母である」この本も再読が必要なようだ。2022/01/19
molysk
76
ショーペンハウアーは、19世紀のドイツの哲学者。世界は不合理、無意味とみなす厭世主義と、意志を根本原理とする主意主義の代表者で、知性を最優位とするヘーゲルらの主知主義と対立。本書は、自分の頭で考えることの重要性を説き、読書は自分の思索の手綱を他人にゆだねることである、と戒める。また、匿名の著述による文化の衰退や、言語の乱れを嘆く。本書の内容を身につけるため、せめて筆者の薦めるように続けて二度読み、自らの頭で反芻して感想を記すことにしよう。もっとも匿名の投書などは、筆者の冷笑の対象にしかならないに違いない。2019/07/05
藤月はな(灯れ松明の火)
74
「読書をするにはただ、受け入れているだけではいけない。批判的に読むことも必要だ」、「本当に良い文は簡潔に本質を述べている文だ」、「本当に良い文学は一時の流行りで売れる本ではなく、後世まで読まれる本だ」と理解できる考え方もありました。「本当の智者は博学でも哲学者、愛書家ではない。日常の事柄で常に考える人だ」は禅の本質やソクラテスの無知の知を指しているようです。ただ、啓蒙思想、万歳が凄いのは西洋至上主義から抜け出せていないなと感じます。そしてこの頃から出版社による読者主体の売上至上主義への批判はあったんだな。2014/08/21