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内容説明
“人間離れ”した囚人たちの異様さが、抑制の効いた訳文だからこそ際立つ。だがここに描かれている彼らは、まさに「人間そのもの」と言っていいだろう。本書はドストエフスキー自らの体験をもとにした“獄中記”であり、『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』など後期作品の原点でもある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
108
三度目の再読。「世界のケツの穴」であるシベリアの監獄にうごめく流刑囚たちの群像は、読者を圧倒する迫力に満ちている。人権という言葉のない時代に一切のプライドをはぎ取られた裸の囚人は、衝動に突き動かされるか卑屈に立ち回るか強い意志力で苦痛に耐えるかを選ぶしかない。生活習慣から衣食住まで現代日本と何もかも違う世界だが、その一人一人に知り合いや報道された犯罪者、ラスコーリニコフを筆頭に文学作品の登場人物が重ね合わせてしまう。読む度に人の弱さ愚かさ醜さを強烈に見せつけられる、人とは何かを考える上での教科書といえる。2022/01/01
優希
51
凄い作品を読んでしまったという印象です。明確なストーリー性はないものの、それを上回る人間の怖さみたいなものを感じずにはいられませんでした。ドストエフスキー自身がシベリア流刑になった際の体験をもとにしているので真に迫っていますね。囚人たちの異様な雰囲気、「人間離れ」しているようで「人間そのもの」のような顔。全てが監獄の物語ではありながら、本当に人々が囚われているものは何かということをつくづく考えてしまいます。世界最高峰の文学へと続く原点ともいうべき記念碑的作品ですね。2014/07/18
ころこ
49
ドストエフスキーが実際に経験し、刑期満了後に書いた後期長編のプロトタイプが本作といわれています。「監獄にいる十年間ずっと、片時も、一分たりとも一人きりになれないことが、どんなに恐ろしくまたつらいことか!」監獄というと、外界と遮断されて孤独と向き合い、罪と向き合い…と考えますが、生きていくために駆け引きを覚え、鍛冶場、鉄工場、木工場、塗装場で技術を覚え、お金を貯めてパンを買う。お金は自由の担保だ。いったいこれは刑罰なのか、それとも信仰に対する受難なのか。癖のある囚人たちとの愛憎半ばする、ロシア社会を凝集した2021/10/11
みっぴー
47
ドストエフスキーがシベリアに投獄されていたときの体験を下敷きにした獄中記です。解説には『広義の意味で小説』と書かれていますが、事実を列挙したルポルタージュ形式となっており、物語性は有りません。監獄の風景、囚人の種類、食堂、労働、病院、風呂、動物、体刑。。。当時にしてみれば、一種の暴露本ですね。ドストの崇拝者又は獄中記に興味が有る方以外は、あまりオススメできません(^^;)感情移入できないまま700pはちょいときつい…2016/04/18
夜間飛行
43
些細なきっかけで罪を犯した囚人も多く、獄中で苦しむ彼らを見ているとまるで仲間のように思われた。しかし手記の書き手は冷静だ。クリチャプカという犬が毛皮にされる話。またクリコーフら脱走者を熱狂的に支持しながら、彼らの失敗を知って軽蔑し始める人々…こういった挿話をつみ重ね、囚人の残酷さ、愚かさ、孤独、そして無限の可能性が丹念に描かれる。ペトローフの言い放った、「どうしてお前さん方が俺達の仲間なんです」という言葉は私にとっても衝撃だった。人の罪や孤立に深く触れていくドストエフスキーの視線には、温かさが感じられた。2013/11/16
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