内容説明
日本は敗戦とともに軍隊という「ハードウェア」を捨てた。しかしそれを駆動させていた「ソフトウェア」はその後どうなったのか? それが再び起動しつつあるとしたら? いまこの国でなにが起こっているのか。気鋭の論客が読み解く日本近現代の地下水脈!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
33
いま注目している戦史研究家の山崎さんの本著は、安倍政権下で進む右傾化の中に潜む「大日本病」の恐ろしさを指弾します。過去の歴史を丹念にトレースして、日本があの戦争に突き進んでいった構造を、イデオロギーとしての国家神道を補助線に検証しています。「失敗の本質」を思想面から分析した、とも言えます。「際限のない褒め言葉に注意」「二者択一や敵味方の二分法を拒絶」「客観的視点と合理的思考の維持」‥‥。私たちが大日本病にかからないようにするための7つの戒めには思わず首肯してしまいました。2019/06/06
ひかりパパ
13
昭和初期から太平洋戦争の敗北に至るまで多数の自国民を死に至らしめた戦争への道の根源に迫るには昭和前期の日本と明治大正期の日本を切り離して考える必要があると著者は説く。昭和初期から敗戦に至るまで日本人の心を支配した価値判断の基準は天皇を頂点とする国家体制を世界に類を見ない神聖で崇高な国のあり方と定義しその未来永劫までの存続のみに価値を置き国民にその目的への奉仕と献身た犠牲を求める国家神道の精神である。この国家神道は敗戦前約20年を支配した思想であり明治大正時代の政治家や言論人に受け入れられていなかった。2016/08/08
バーバラ
10
安倍政権になって以来の社会が満州事変以降敗戦までの時代に酷似してきたこととその背景をわかりやすくまとめた一冊。徹頭徹尾説得力十分の内容でこのスペースでは具体的に紹介できないのが残念です。山崎さんは日本を優れた特別な国と見做し相対的に他国を蔑視する戦前戦中の風潮を「大日本病」と名づけその再発を防ぐために「謙虚な姿勢で考察する」「独立した思考を持つ個人であり続ける」など幾つかの提言をしてこの本を締めくくっています。私達一人一人がこうしたことを心がけていくことで自由で平和な社会を守ることができるのだと思います。2016/01/12
樋口佳之
8
タイトルの戦前とは30年代から1945年のこと。当時日本がおちいった大日本病が安倍政権下ではっきりと再発しつつあるという危惧。/1967年生まれの方で、使われている言葉が理解しやすい本。/フランス、ドイツ、日本の負け方の比較は戦史研究家らしい話。2015/09/13
kawasaki
7
戦史研究家による憂国警世の書。いわゆる「左派」とは異なる立場からの、1930年代日本批判と、それに似つつある「現在」への問い。amazonで某書評子は政権批判について留保しつつも「右派でもしっかり読める」と評していたが、左曲がりの私にもよく読める本であった。「左派」の類書は内輪向けかと思われるものが多く、本書のように「自分とは異なる立場の読み手」に届くことが少ないように思うのだ。「保守」を自任する側も「護憲」を自任する側も、二分法に陥り閉塞しているように思われるいま、もっと読まれてほしい本である。2015/12/19