内容説明
芸大に通う杉野誠一は“声の色”で見たくもない人の感情や嘘が見えてしまうことに悩まされていた。そんな彼がキャンパスで出会ったのは声を失った透明な女の子。『川澄真冬』と書かれたメモ帳で自己紹介をした彼女は、誠一の映像制作を手伝いたいと申し出た。不審がる誠一の前に、古ぼけたカセットが置かれる。そして、彼女は手伝う条件として、テープに録音された姉の歌を映像に入れて欲しいという。 声の色を気にせず話せる彼女に惹かれ、生まれて初めて心の色を知りたいと願う誠一。だけど、彼女の透明な色には秘密があって――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
た〜
58
前作のような「見事に騙された」というものはないけれど、きれいな物語だった。ちょっとだけ特殊な能力を持った主人公と声を失った女の子の王道な恋愛物語。2015/09/11
dr2006
55
心の声に可視光を当てたミステリアスな物語。見えない心、見たくない他人の心の絵が切なくて引き込まれた。芸大で映像を学ぶ主人公杉野誠一は、人が話す声と表情から感情が色として見える「共感覚」の持ち主だ。先輩の留年阻止の為の映画制作を手伝うことになった誠一は、主役としてやってきた川澄真冬と出会う。3人で始めた映画制作だったが、誠一は徐々に真冬に惹かれていく。…という、使い古された恋愛物語ではなかった。真冬は聞こえるが声が出せないのだ。だから誠一は彼女の心の色が見えない。そんな彼女が映画に加わった本当の目的とは…。2021/02/06
いーたん
54
バッドエンドなのかと途中、モヤモヤしましたが、ハッピーエンドで納得いく結末でした。誠一や真冬の立場、状況などは彼らのバックグラウンドを慮れば、読者として十分に共感できるものでした。そして、彼らの過去からの解放と成長は読後感を良いものにしてくれました。2015/11/17
まりも
54
待ち望んでいた作者さんの新作は「声の色」で人の感情が分かってしまう芸大生・杉野誠一と失語症の女の子・真冬が映像制作をきっかけに出会う所で始まる物語。期待通りの面白さでした。設定そのものはベタですが、その設定の使い方が巧いですね。相手の感情が見えてしまうせいで一歩踏み込んだ関係を築く事が出来ない主人公が、メモや携帯越しで行う真冬と交流していく中で少しずつ変わっていく姿はすごく良かったです。物語の構成もしっかりとしていて、読み終えた後は心地よい気分になれる素晴らしい1冊だったと思います。次回作も楽しみ。2015/08/27
菅原孝標女@ナイスありがとうございます
50
昨日に続けて小川さん2作目。こちらもコミカルで読みやすかった。というか文章がうまいんだな。あと大変ユーモラス。本作にも思わずクスッとなる箇所があったし、あとがきまで楽しませてくれた。 設定上真冬ちゃんに関しては薄々そうかなと感じていたけれど、事件の真相についてはなるほど!と感嘆。 誠一くんはいずれ…………。? あと、我妻先輩いい味出してた。笑2018/02/22