内容説明
ニューヨークで生まれ育ったシエラは、幼いころに兄を亡くし、母親との確執に苦しんでいる孤独な少女。唯一の友達だったアナベルも交通事故で失った彼女は、鬱々とした思いでマンハッタンの街を歩いていた。そこに不思議な老婆が現れ、トルコ石をシエラに渡す。シエラは石に導かれ、異世界・ヴェレに行き、そこで自分が世界を救いたる存在、<石の司>であることを知る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
89
母との確執に悩む少女シエラが、異世界での冒険を経て成長するファンタジー。人はみな胸の内に小さな悪を持っていて、些細な誘惑でそれが大きく育つこともある。異世界ヴェレスで悪意に支配された者たちに対抗するのは石細工職人。石の持つ力が悪意を封じていく。乾石さんお得意のギルドや宝石といったディテールの描写には引き込まれる。でもシエラの家族にもやもやするし、ラストにも不満が残った。なんだかとても残念。2016/10/11
ゆみねこ
70
今までの乾石さんの作品に比べると、軽い感じは否めませんね。現代と異世界をを行き来すると言うのも悪くないのですが。ちょっとゲームのような展開、みんなの力を合わせて、途中で新たな仲間が加わってラスボスを倒す的な。宝石に興味があったらもっと楽しめるかもしれません。次作に期待します。2015/09/11
ひめありす@灯れ松明の火
68
乾石さんの文章は何処かに、外国の児童文学を丁寧に翻訳した様な端正な硬質さがあると思っていて、だから読み始めたときには『これって翻訳小説じゃないよね?』と少し不思議な気分で読みました。NYの様子までも、ファンタジーの世界と同じ位自然な感じなのです。ここまで端正だと、いっそ歴史小説とかも書いて欲しくなります。沢山の綺麗な石と、綺麗な情景と、強くなろうとする少女と。不純な物は曇ったり罅割れたりして不完全かもしれない。でも中に何を秘めたか、従えたかで変わってくる価値もあると思いました。映画にしてみてみたい感じです2015/09/18
ちはや@灯れ松明の火
40
昏く冷たい土の奥に眠る原石のように息を殺してきた。母に疎まれ虐げられてきた娘を異界へと導くトルコ石の翼。祈りを込めて磨かれた石に光を宿すも闇を巣食わすも人の心次第。たった一人だと思って生きてきた、胸に棲む双頭の蜥蜴が吐き散らす憎しみの炎と罪悪感の毒。強い決意を秘めた硝子の珠、癒しの花から生まれた金針水晶、邪を退ける紫水晶の天蓋。たった一人のかけがえのない自分だと信じることができたなら、花は石に、星は石に、石は輝きになる。揺るぎないダイヤモンドの光と双頭の蜥蜴の深い寝息とを胸に抱き、空を仰いで生きていく。 2016/08/20
星落秋風五丈原
35
ノンシリーズ。アメリカに住む16歳の少女シエラが異世界から召喚されて石の司と呼ばれる。彼女をはじめとして登場人物達が体に飼っている動物はそれぞれのウィークポイントで、それらとどうつきあっていくかを学ぶ物語。宝石好きな人は楽しめるかも。象徴しているものがとてもわかりやすく書かれておりティーン向け。2015/09/05