内容説明
全共闘運動の記念碑作品。
肺病病みのピアノ弾きが、献身的な恋人や死んだ両親を思い起こしつつ、騒動に巻き込まれていく。地下室での演奏。電気は消え、反対セクトとの乱闘の中、楽器同士が火花を散らし競演し、脳中にイメージが錯綜していく……。仲間たちと脱出したピアノ弾きは、最後は穏やかな気持ちで自分の吐いた血を見つめる……。
「JAZZによる問いかけ、自己を武器化せよ! 自己の感性の無限の解放! 」。バリケードの中の投石と怒号渦巻くジャズ・コンサートを描き、全共闘運動の記念碑的作品となった「今も時だ」は、テレビ・ディレクターだった田原総一朗が、1969年に企画した山下洋輔がバリケードの中でピアノを演奏したイベントを題材に小説化。新潮新人賞候補となり、商業誌デビューした作者の記念すべき作品。
ほか、自身の3ヶ月に及ぶインド旅行経験を元に、立松文学の原点を示す「ブリキの北回帰線」と、「部屋の中の部屋」を収録。いずれの作品も若い日の立松の青春の彷徨が描かれている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もだんたいむす
6
退廃的で性的に際どい描写が多く、私には合わなかった。★☆☆☆☆2016/02/19
PapaShinya
2
村上のアレが話題になったので、読んでみた。実は、小説を読んで音楽が聞こえてきたことが一度もない。今回も。映像からは、音楽が聴こえる。映像にもよるが。絵画や建築からも。だから小説を読んでいて音楽が欲しい時は、村上みたいに小説の中でレコードをかけてくれるのが、一番有難い。2022/07/26
みや
1
3篇収録。漲る若さを端々に感じる初期の作品群。短いセンテンスで場面を繋いでいく文体は、スチール写真を次々に見せられるような感覚。どの作品からも、自由の希求と体制へのアンチという当時の若者の志向が読み取れる。しかし、その身勝手さからは、同時に幼稚性が露見しており、一つの世代の終わりを示唆しているように感じる。諸事情あって毀誉褒貶相半ばする著者だが、全共闘世代の青春を切り取った価値ある作品だ。2019/03/02