内容説明
日本政治思想史と政治学の知見をもって戦後思想をリードした丸山眞男。その思考の特徴を示す代表的な論考を集め、丸山再認識への最良のエントランスを提供する。編者による鮮やかな丸山論収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
45
日本における戦争責任についての記述が多い。責任の所在のなさについては、日本人の特性としての欠点だと思う。さらに自らの被爆体験についても語っていらっしゃる。この体験が氏の戦争考察につながっているのは間違いないだろう。2015/09/29
踊る猫
35
これはあなどれない1冊と映る。丸山眞男の分析はいまなお読ませる強度を誇っており、時代が大きく移り変わった現在でも「日本人論」として傾聴に値する。ただ、鵜呑みにするのも危険というものだ。ぼくはここから、「組織とは、総じて末端の人々を『無責任の体系』に呑み込むことで成立する性格があるのではないか(ほんとうに日本だけが特別なのか?)」と思考を自分で走らせる努力をしたい。そうでなければまさに丸山が懸念したとおりに「お仕着せ」の思考で満足する人間がまた1人できあがるだけだ。本書と共に自分の頭で国家主義を考えてみたい2025/07/28
逆丸カツハ
34
予想以上に重要なことを言っている人で驚いた。誤りも指摘されているところもあるだろうが、今に続く議論のベースになっているところが見受けられる。福沢諭吉にはあまり興味がなかったが、読んでみたいと思った。2024/06/12
白義
22
丸山を語る時誰もが引くような名論文ばかりで編まれている。それぞれの文章は分析の対象こそ違うものの、全てを通じて流れる通奏低音は一貫していて、社会の現状を動かしがたい自然と捉えてそれに居直る状況主義、日本の政治風土の「作為」の契機のなさを批判し、多元的な現実の中に精神の躍動を吹き込む近代精神と真のリアリズムを推奨している。その認識から生まれるメタ的な言論分析は現在も見事に該当する。特に「福沢諭吉の哲学」は福沢諭吉という思想家に仮託された丸山自身の理想像といっていいだろう2014/11/03
しゅん
15
今でも通用する鋭い議論ばかりで驚く。むしろ70年前から私達がどれほど進めたのか心もとなくなる。「現実を直視せよ」という言葉は現実の多面性と向き合っていない、とかほんとにそうだよな。政治的無関心も政治的判断である、というのも納得。平易な言葉で書かれた切れ味抜群の論理。反対に、相当量の思索が送り込まれたであろう複雑な議論もある。福沢諭吉から受け継いだ、絶対性を疑い相対的な判断を重視する思考は文体スタイルの幅広さからも読み取れる。ナチと日本軍の分析は特にすごい。正直、ここまで面白いとは思わなかった。2016/12/18