内容説明
戦国の英雄たちの中で群を抜いて輝く二人の武将――天稟(てんぴん)の智将・真田幸村と、千軍万馬の勇将・後藤又兵衛。名将なるが故の葛藤と互いの深い洞察を語る〈軍師二人〉。徳川家康の女性観を描く〈嬖女(めかけ)守り〉。他、争乱の時代を生きた、戦にも、女にも強い、生き物の典型としての男たちを描く、興趣尽きない短編集。
感想・レビュー
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ケイ
117
『軍師二人』のみ再読。この戦いの舞台となった道明寺は、西国三十三所の第五番札所の葛井寺の近く。水野や伊達がやってきた奈良の峠の方へ葛井寺から向かうと、西国三十三所の番所六番の南法華寺に着く。巡礼の道は、武士らが通った道でもあったのだな。幸村がいた四天王寺は、西国三十三所の番外の札所。そこに参る時にまた読もう。軍師二人でも、この二人が本当に軍師であったならば歴史は変わったかもしれないという司馬遼太郎の気持ちが見え隠れする。軍師の仕事を十分にさせなかった大阪城のトップらへのシニカルな語りが随所にみられる。2022/06/28
GaGa
51
司馬遼太郎の持つ皮肉さが痛烈な表題作。正直どちらも負け戦の将で軍師とはいいがたい。ただ、大名であった真田幸村よりも、一兵卒であった後藤又兵衛が正直聞く耳を持たないといけない。そういう意味では死に花咲かせてやり、かつ己の死に場所を己で決めた幸村の方が武士としてはあっぱれか。2012/08/30
かんらんしゃ🎡
45
関が原以降、次第に戦さが無くなり武闘派の武将は必要とされなくなる。居場所がなくなった時に考えるのは「生きながらえるより名を残す」事。カッコいいのばかりじゃないけど、己の最期は己で決める。オレもそうありたい。今じゃ自分の後始末ができない奴が多すぎる。特に永田町辺りには。司馬遼太郎を読め!2022/09/14
Wan-Nyans
45
★★★★8篇の短編集。再読?「割って、城を」以外全く記憶になかった…。それだけ茶人大名・古田織部を主人公にした一編が衝撃的と言えるが他編も十分に秀逸。「雨おんな」「一夜官女」など男女の情愛が生々しい作品が多いのは司馬作品には珍しいかも。ただ、男でも惚れてしまうような日本史上の”漢”を描く姿勢は一貫している。大坂の陣で藤堂配下として長宗我部隊と激突する渡辺官兵衛了を描いた「侍大将の胸毛」は、長宗我部盛親を描いた長編の「戦雲の夢」と合わせて読むのがお勧め。本作にも名前の出る桑名弥次兵衛、思い出すだけで涙が…。2021/12/26
ねこ
45
8編からなる短編集。主に女性が要になる作品が多かった。時代は戦国末期、場所は関ヶ原や大阪の陣の舞台が多かった。この短編集はどれも物悲しさを感じる作品となっており、司馬遼太郎テイストの違った一面を垣間見た箇所が散見できて満足です。8編の中で「侍大将の胸毛」が私は1番好きです。最初は大葉孫六の視点で語られ、後半は孫六の御内儀、由紀の視点で渡辺官兵衛への想いが綴られています。渡辺官兵衛の名は「了」であり、渡辺の姓で名前が一字の者は大抵、渡辺の綱の子孫だとあり、彼の剛力の源はそこに起因しているのかと納得しました。2021/12/07