内容説明
斡旋屋に島の水道工事のアルバイトとして送り込まれた若者が、島のヤギから搾乳しチーズを作るという、無謀な夢にとりつかれる。 湿気の多い南国でチーズを熟成させることの難しさ、島の複雑な人間関係と恐るべきタブー…… すべてを乗り越え「至高のチーズ」はできるのか? ミステリアスに鼓動する小さな島を舞台に、生きることの圧倒的な奥行きが浮かび上がらせる傑作長編小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
90
ピンザとはヤギのこと。離島でヤギのチーズを作ろうと努力する若者、島の文化はヤギは食用にするもの。かつて父が夢見たヤギチーズ作りを志す涼介と、父の親友で共同経営者であったハシさん。島特有の閉塞感と排他性、涼介の未来はどうなるのか、作者はそれを読者の想像にまかせたのでしょうか?ドリアンさん2作目、文章は読みやすくて結構好きです。2014/08/29
chimako
76
生きる意味や自殺願望や風習や自然や命や敗北や諦めや中途半端や共存や過去や未来が南の島の風に乗って一気に来る。台風も来る。山羊も来る。……どうしても会いたい人が居る島にやってきた。聞きたいこともある。その人は敗北者となって静かに暮 らしていた。島は来るものを歓迎しながら拒み続ける。 庭にピンザが飼われている。ピンザは山羊。山羊のチーズを作りたい。その前に経験する試練は命のやりとり。「死ななければ生きてゆける」を胸に「もう一つ生まれた世界」に舟を漕ぎ出す。月光溢れる海は彼を受け入れてくれるのだろうか。2015/08/12
Shinji Hyodo
65
『あん』が余りにも良くて、作者の本をも少し読みたくて…『ピンザ』とは山羊の事です。主人公の涼介は両親を亡くし、自らも死の淵にその身を投げ入れてしまいたいと足掻く青年。そんな涼介が、母親に託された事を遂げようと渡った離島での数ヶ月を時に激しく、時に叙情的に描いた物語でした…島に育つピンザの乳から極上のチーズを造る夢を応援したいと思いつつ、島での暮らしがこんなにも厳しいものなら私には無理だ。でも、涼介は諦めないんだろうな…この頑固者が^^;で、母の願も叶えて無いしどうすんだ⁉︎で終わってるけど嫌いじゃない2015/05/26
choco
58
生きるとは孤独な事なのかもしれない。また、生きるとは残酷な事でもある。でも、人は必ず繋がっている。暖かいものを感じた。2016/05/15
ナミのママ
52
文庫化されたようなので読んでみました。展開も早く、登場人物もすっきりしていて読みやすかったです。でも・・・『あん』同様、物足りなく感じます。映像化された方が綺麗になりそう。この作家さん、ストーリーはとても素敵なのですが、どうも描写が物足りなくて、深みがないというか、もったいなく感じます。・・・あくまで私の感想ですが。2016/06/15