内容説明
昭和27年の夏休み。14歳だった「私」こと進と一彦は、六甲山にあるヒョウタン池のほとりで、不思議な雰囲気を纏った同い年の少女と出会う。池の精を名乗ったその香という少女は、近隣の事業家・倉沢家の娘だった。三人は出会った翌日からピクニックや山登りを通して親交を深めてゆく。自然の中で育まれる少年少女の淡い恋模様を軸に、昭和10年のベルリン、昭和15年の阪神間を経由して、物語は徐々にその相貌を明らかにしてゆく。そして、最後のピースが嵌るとき、あらゆる読者の想像を超える驚愕の真相が描かれる。数々の佳品をものした才人による、工芸品のように繊細な傑作ミステリ。/解説=戸川安宣
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
463
面白かった。作品世界内では浮かび上がってこない裏側を読者にだけ突きつけるというのか、某有名作を連想したという声も多いのも理解出来る。インパクトと分かりやすさでそちらの作品に軍配が上がるかもしれないが、細かい作り込み方や世界観自体で、私はこちらの方が好きだった。文章や頁数から、本当にこの時代に描かれた作品なのかと思っていたが、発表が2008年というところが驚き。創元文庫は昔の作家率が高いという固定概念を持っていたせいもあるが。作者自身はかなりのベテランのようで、まだまだ未開拓の領域も広いと再認識。2017/04/06
しんたろー
188
多島斗志之さん初読み。少年二人&少女一人のひと夏の青春物語…だと思って読んでいたら、ミステリの嵐が終盤にドッと押し寄せて慌てて読み返し…叙述トリックだらけに納得。多少強引な伏線の回収や題名がヒントになり過ぎているのでミステリとして手放しで賞賛はできないが、六甲やドイツのノスタルジックな描写、思春期の恋心、昭和初~中期の世情など、素敵な雰囲気が満載されていて好きな世界観だった。230ページの中編なので文章も平易なのでサクサク読めるが、アチコチに張ってある伏線に気が付けば、更に深く楽しめると思う。2017/11/19
nobby
166
読了後の第一声は“脱帽”。何かあるの情報に身構えて読み進める。14才の少年少女の一夏の恋物語、そこに挟まれる様々な過去エピソードに、頭の中で時系列や人物関係を充分に整理して伏線もたっぷり気付いてたつもり。毎度ながら浅はかに予測組み立てて迎えたラスト。最終章に入って見事にハズレは想定内(笑)あらためて気になってた事柄の絡め方が秀逸。文庫250頁でのコンパクトさを満喫していたら、まさに驚愕の最後5ページで全部ひっくり返された!いやもう手にした瞬間から示されてたんだなぁ…2017/04/19
三代目けんこと
131
「創元推理文庫」第3弾は、2016年『おすすめ文庫王国』第1位の多島斗志之本。帯に書かれていたとおりラスト5ページで見えてた景色が、がらりと反転したラスト。理解が追い付かない部分があったが、他の方のネタバレ解説で納得。悔しいが完敗です。では次へ…。2021/07/24
藤月はな(灯れ松明の火)
115
名前だけは知っていたけど、初めての多島斗志之作品。幼い時に六甲での淡い初恋。仄暗い香の出生がありつつも少年たちのノスタルジックな三角関係を微笑ましく、見ていたら・・・。真相を知ると、ラジオ番組『君の名は』に夢中な香の叔母の気持ちに切なくなってしまいます。でもこれは彼らにとっては知らないままが良かったと心から思います。美しい思い出は美しいままで。それくらいはいいでしょ?2017/10/13
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