内容説明
恩師の葬式で再会した五人の女。近況を報告しあううちに、教室で思いがけず見たビデオの記憶が蘇る――。先生と濃厚なセックスをしていた、あの女は誰だったのか。互いに互いを疑いながら、女たちは今日も淫らな秘め事を繰り返す。不倫、密会、出会い系……。秘密を抱える腹黒い女たちと、それを監視する窮屈な箱庭、京都。重ねた嘘が崩壊する時、女たちの本性が放たれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
annzuhime
70
花房ワールドにデビューしました。ここまであからさまな性描写はあんまり読んでないので少し戸惑いました。でも過激な割にはみんな寂しいのねと思ったり。女同士の水面下での駆け引きとか優劣をつけたがる所とか、すごくヒリヒリしました。あのビデオの女が誰かもずっと気になったし。すごくエロかったけど、心理描写の上手さに引きつけられました。2021/10/05
ふじさん
70
読書メーターで知った初読みの作家。舞台は京都、土産物屋を手伝う絵奈子、専業主婦の里香、かつてはミスコンに入賞する程の美貌の持ち主愛美、カフェ経営の唯、リラクゼーションの店を経営する翠、この5人の秘密を抱えた女たちのドロドロとした女の情念が綴られた小説。解説の唯川恵が「たっぷりいやらしい。具体的にいやらしい。容赦なくいやらしい。そして、たまらなく、いじらしい」、この言葉に同感。 2020/11/19
dr2006
65
倫理は欲望のままを許さない。躊躇ない性描写に主題を見失いそうになる。女の性と本音を艶やかに描くと名高い本作品を、手に取るのに勇気がいった。学生時代の恩師の葬式で12年振りに再会した5人の女性達を描くオムニバス。女同士が集まれば、互いの近況を表面的には羨んで見せたりしながら自分と比較し、嫉妬と本音を隠す。「みんな外に向かってはええ顔してる。」どんなに綺麗に「庭」を手入れしていても、他の誰にも言えない「ウチ」がある。女の「庭」が象徴するものとは何か。決して分かり合えない5人の「庭」を覗ける濃厚な読書だった。2019/10/28
TANIZAKI
59
「情人」「紫の女」「女の庭」と続けて読んだ。著者は一見男目線に媚びる感もあったが決して男目線ではなかった。性行為は生殖や欲望のためだけのものではなく、孤独を知り人肌を知る人間がその温かさを手に入れて生きていることを思い出すためのもの。確かにお互いに家庭があるから純粋に性行為だけを楽しんだり、夫に見られながら他の男に抱かれて期待で震え快楽を共有できる共犯関係もあるだろう。他の男と寝ても身体は悦ぶ。けれど心も身体も淫らに縋りつき離れ難くなるのは本当にその温かさを知り得た男のみだろう。この著者はいつもそれを言う2020/09/27
わっぱっぱ
57
怖い?みっともない?腹黒?とんでもない。愚かしくて強かで、哀しくていじらしい、素敵な女性賛歌の書。女の性サガを、人の業を懸命に生きる女たちの姿が胸アツ。人間、死ねば成仏するというのだから、生きてる間はせいぜい煩悩にまみれてやるかなんて気概も湧くというもの。開き直って好き勝手やったれって意味じゃなくて、もう、自分の選択を人に預けるのは、やめにしようじゃないか。 「自身の在り方を測れるのは、負の感情との向き合い方にある。」(唯川恵/解説より)本当の強さを、優しさを知るための今だ。2018/02/13