内容説明
幕末随一の文明藩、佐賀藩の鍋島閑叟(かんそう)は、若い秀才たちに極端な勉学を強いた。近習・秀島藤之助は、世界最新の高性能大砲の製造を命じられ、頭脳の限り努力する。酷使された才能は斃(たお)れたが、完成したアームストロング砲は、彰義隊を壊滅させ、新時代を開いた。風雲の中に躍動する男達を描く、傑作9編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
85
面白かったです。幕末動乱の風雲の中で暗躍する男たちを描いた短編集。その躍動する力は時代がそうさせたと言っても良いでしょう。新撰組好きとしては、やはり新撰組ネタにはニヤリとさせられますね。2018/04/28
びす男
65
難しい本が続いていたので、久しぶりに司馬遼太郎を読んだ。やっぱり面白い。読みやすい。単に無駄がないだけでなく、どこか人を惹きつける、本当に不思議な作家だ。短編集の書評を書くのはなかなか難しいが、この本の場合は幕末の時代に翻弄された男たちの物語が中心だと言えそうだ。龍馬のように、燦然と輝くわけではない。むしろ、この本の主人公たちは時流の巨大なうねりの中に呑み込まれ、沈んでしまっている観がある。逆に言えば、そういった人達を掬いあげる著者の腕前を楽しめる一冊だ。その中から、新撰組や、龍馬なども生まれたのである。2015/02/23
ポチ
58
短編9話。表題の「アームストロング砲」と、沖田総司の「理心流異聞」は割と好きです。短編だから淡々としてしまうのは仕方がないけれど、もう少し読みたかったなぁ(^^)2017/01/29
kawa
56
幕末のあまり知られていないマイナーな人物や事件をテーマに取り上げた短編9編、うち新選組絡みが7編。表題作は佐賀藩における近代兵器開発の物語。老公・鍋島閑叟の「勉学は合戦と思え」の号令のもと、発狂する秀才たちが多数出たという話が凄まじい。天誅組事件を扱った「五条陣屋」の悲劇も興味深い。歴史の波間に消えてしまいがちなドラマを鮮やかに蘇らせた司馬先生に拍手。 2019/12/17
森林・米・畑
53
幕末モノ短編集。無名な人にスポットライトを当てている。あとがきによると、新選組や坂本龍馬などは、大正~昭和初期の維新60年あたりから人々に知られるようになったという。新聞記者なとが幕末期に生きた古老達から聞き書きした文献等が残る。それらを参考に司馬遼太郎は作品のヒントにしていた。歴史なんてウソかまことか分からないが、文献と想像力で物語を紡ぐ。すごい事だと思った。題名が『アームストロング砲』は短編の中の一つ。当時の佐賀藩は日本で一番早く近代化されていた事が分かる。2021/11/25
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