内容説明
宮廷の貴族が、秘めた愛や篤き友情を詠み交わした「相聞歌」。防人が異国の地で望郷の想いをうたった「防人歌」。農民が戯れに紡いだユーモアあふれる「東歌」。古えの日本の心を豊かに伝えてきた『万葉集』全4500余首より珠玉の252首をセレクト。万葉研究の第一人者があらゆる地域、階層の万葉人の心に寄り添い、歌に隠された数々のドラマや四季折々の日本の風景に想いを馳せながら、丁寧に味わい、深く読み解く。巻一から二十まで順を追って辿り、それぞれの巻の歴史的背景や、用語などの基礎知識を学びつつ鑑賞できる『万葉集』解説の決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅてふぁん
46
中西氏の解説を読むとさほど注目していなかった歌でもその情景が輝いて見えて素敵だなと思える。こうやって巻ごとに読んでいくと、やはり初期の歌が好きだなと改めて思った。特に初期万葉の古めかしい言い回しには心を鷲掴みにされる。これまでは苦手意識もあった長歌だったけれど、家持の長歌は結構好きかも。古の時代の戦はことばの戦、歌やことばに巧みな者が戦にも長じていたこともあって、大伴氏は‘ことばの家柄=武門’ということらしい。ことばの力は偉大だ。2018/09/26
Koichiro Minematsu
26
万葉人は愛に溢れている、優しさが極まりない、それでいて人間的。筆者の中西先生の注釈が手助けになり、万葉人との対話を感じれたことが、心地よい。巻十六は「愚の歌」とあるが、最近ある事件で実母を「愚母」と書き込んでいたニュースを思い出したが、「愚」とは人間的ということであり、見下す使い方をするものではないとも知った。万葉集は人のあり方も教えてくれる。うん、心地よい。2019/06/07
まっちけん
7
「令和」を選定した一人と目され、一躍時の人になった中西さん。万葉集が好きで好きで仕方ないことが伝わってくる(文学者の「鑑賞」の態度について綴ったあとがきが最高)。ただ、分厚いとはいえ文庫1冊で、そこまで注釈や訳には紙幅を割いていないので、入門書としてはおすすめできないかな。見出し数252首、言及含むと523首。それでもまだ1割ちょっとだ。次は講談社文庫の全訳注を片手に、再読かなぁ。4500首読破をライフワークにしたいけど、鑑賞も注釈も、中西さんについていこうと決めたのであります。2020/08/02
ヤベ
4
2年前に一通り目を通して正直内容を殆ど理解できなかった万葉集の和歌たちをしっかり味わいたく、解説本に和歌の読み方を教えてもらおうと買った。この本では、歌の意味が句ごとに分けて解説されており、その文体表現も精緻、正確かつ詩的だから、読者は和歌の歌う意味や景色を鮮やかに芸術的に脳裏に呼び起こすことができる。この本を頼りにもう一度万葉集に挑もうと思う。2022/03/03
れいまん
3
万葉集の第一人者による、セレクションと解説はさすがに秀逸!万葉の世界に浸るには更なる読み込みが必要だが、そもそも万葉集とは、万葉集を読むとはという深い読み解きが有るので正確性が有る。再読必須2022/03/27