内容説明
著者は現象の背後に実在を想定する二元論の仮構を否定する。そして自らが見て触れて感じている現実世界にどっしりと足をつけ、それを超越しているかのごときものをどう捉えたらよいのか問い進めてゆく。独自の哲学「立ち現われ一元論」のエッセンスが詰まった、大森哲学の神髄ともいえる名著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
4
科学哲学寄りの大森哲学を垣間見る。難しい言葉を避けているが、内容は一筋縄ではいかない。精読の必要あり。2015/06/27
Takuo Iwamaru
4
「(前略)純粋に理論的に発想していきながら、その事例となって表れてくるもののあまりな奇怪さに、それが哲学論文であることも忘れて、まるでシュルレアリストの画家が描いたタブローでも覗き込むがごとき読書を味わった」これは『音を視る、時を聴く[哲学講義]』という大森荘蔵と坂本龍一の対談集で、坂本龍一があとがきで大森の哲学に触れたきっかけを書いたもの。『物と心』から、大森の哲学が実に「奇怪」であるのに、読者(僕)をしてそれを納得させてしまう凄みを覚えた。本書はまた、笑いを誘う表現が頻出する。真の哲学者には余裕あり。2015/02/20
原玉幸子
1
数学や量子力学を引き合いに、「羊羹の切り口に羊羹は無い」(本書第四章)等の面白い表現で論理を説くところは良いのですが、著者が多く引用するヴィトゲンシュタインをして「論理学ってこういうもんだろう」そのままなので、理屈っぽく、又、日本の近代自我から実存主義に入っていったレベルでの(哲学=理屈ばかりで金にならない学問との悪い印象の時代の)古い感性の哲学と思いました。(◎2017年・秋)2020/02/20