内容説明
時代を切り拓いてきた人の思いと夢に迫る人物ドキュメント番組「100年インタビュー」(NHKBSプレミアム)で放送された、ノンフィクション作家・柳田邦男氏の回を単行本化。なぜノンフィクション作家になったのか、生い立ち、学生時代~NHKの記者時代をふりかえって語った第一部。心を病み、引きこもっていた次男が自死を選び、脳死状態に陥った際にかわした深い心の対話。そして取り返しのつかない悲しみと喪失感から立ち上がるまでの心の軌跡を明かした第二部。悲しみの中で出会った絵本が、人間の心に必要な救いを与えてくれると気づいたことから、絵本の魅力を広める活動に取り組んでいる現在を語った第三部。数々の事故、事件、災害を取材し分析した経験から、人間がいま感じ取るべき心の危機に警鐘を鳴らすとともに、どんな不条理なことが起こっても生き抜かなければならないそれぞれの人生をどう支えるかなどが丁寧に語られた、心に響く一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃんみー
42
さらっと読めるインタビュー形式の本です。さらっと、というのは書かれている内容の重さのことではないのでお間違いなく。便利になった今の世の中での家族や社会の弊害を語っているところと、近年絵本の良さを伝える活動をしているところがあります。インターネット、スマホなどが登場し便利になった世の中で、次代を担う小さな子供たちが社会に適合し素直に生きていくためには、絵本の読み聞かせはとても大事だろうと思います。うちの子供達にも絵本の読み聞かせをした。感受性豊かな人になっていると思うのだが。2014/07/13
PAO
22
「親父は本当に苦しむ人の心の深いところまで、見ていたのか。本当にそれを見ていたなら、俺の心を見ていたか」…私が最も信頼するノンフィクション作家である柳田さん。『マッハの恐怖』『零戦燃ゆ』等の作品で公平な目で事実を見つめることの大切さを学びました。ご自身の次男の自死という悲劇が突きつけた詰問の重さはノンフィクション作家としての根幹を揺るがすものだったでしょう。そしてその経験から、様々な出来事を対象として見るのではなく自身に引き寄せて考えてみるという更に深い境地に至った柳田さんを一段と尊敬したいと思いました。2021/03/21
なにょう
20
出先でみつけた本。ほかの著作とかぶるところあり。★便利で楽しいだけが人生じゃないと。便利・楽しさばかりを追求していったら世の中おかしくなると。昨日読んだ服部文祥さんも表現方法こそ違えども同じようなこと言っている気がする。世の中、人生に対してお客さんとしてではなくって、楽しみを貰うばっかりじゃなくて、主体的に参加していかないといけないという。毎日仕事に行って、特に変わり映えもなく、親も老いてくるし、何にもいいことないような気もしてくる。しかし、一ヶ月、一年単位で見ればやはり何かが変わっていくだろう。2021/04/11
panashe
15
両親が亡くなってかなり月日は流れたが、年々悲しみが強くなってくるような気がしている。自分がその年齢に近づいてきたからなのか、子育てが少し落ち着いて心の隙間が出来たせいなのか? 柳田さんがおっしゃる「死んで肉体は滅びても 心は誰かの中で生き続ける」とはそういう事なんだろうな。大人こそ絵本を!と書かれていた。少し絵本を読んでみようかな? 2016/05/26
kiho
14
家族を思わぬ形で亡くした当事者となった柳田さん…だからこその苦しみや悲しみの大きさは計り知れないだろう。何をもって辛さから解き放たれるのか…とてもつかめないけれど、苦しみながら生きる中に意味を見出そうとする葛藤が深く迫ってきた。2016/02/11