内容説明
「機関科問題」と聞いて、その意味が理解できる人は、かなりの海軍通であろう。本書で扱った命題は、普通の戦史には決して出てこない、“裏面史”である。だが、明治期以来の日本海軍史を通じて、軍首脳が頭を痛め続けてきた大問題であり、「海軍のガン」と呼ばれていたほどのものだったのだ。それは一言で言えば、「組織内差別」であった。具体的には、「同じ軍艦に勤務している士官であるのに、海軍兵学校卒のほうが海軍機関学校卒よりも偉いという規定があり、機関科士官の中に不満が堆積した状態が慢性化していた」というものだ。海軍は、軍紀の乱れと士気の低下を生む元凶となっていたこの問題を重視し、長年にわたって様々な施策を繰り返したが、ついに問題解決を見たのは、大東亜戦争の終戦間際であった。今日まで、海軍関係者が書くに書けなかった問題の全貌を、ついにまとめあげた、貴重な一冊である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蟹
2
いわゆる機関科将校に対する差別問題を軸に、機関科将校の人事教育制度を分かりやすく解説している。その立場は決して機関科将校に対して同情的なだけではなくて、兵科将校との対立にうつつを抜かし、エンジニアとしての自己研鑽を怠る一部機関科将校への批判も取り上げられている。兵・機一系化は戦時中にようやく達成され、戦後の海自も概ねそのような方針にあるわけだが、それが専門性を損なう一面もあるように思われる。日本海軍の人事教育制度に関しては様々な批判があるが、中には相矛盾するものもあり、制度設計の難しさを感じる。2016/05/06
ごいんきょ
0
皆さんは士官と将校の違いを知っていますか? 指揮命令系統や待遇で大きな違いがあるのです。 職務上の権限の差は有って然りですが、それが待遇や差別に繋がるとなるとそれはいただけません。 そんな差別撤回への長い道のりが述べられています。2016/01/02