内容説明
ホームレスのありのままの姿。社会からドロップアウトした人だけでなく、精神病疾患や障がいを持つ方たちにも焦点をあてる。うつ病、DV、派遣切り、認知症……。20年以上、ホームレス支援を続ける精神科医が現場の現実を活写する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
72
人とは哀しいものだ。そして度し難い。自分の尺度でしか人が見えない。そんな人が行政や医療や福祉を統べる。この本が文庫になるまで時間がかかっている。今はこの本が書かれた時以上に、臭い物には蓋をし、透明人間のように接する。介護保険も役にたたなくなってきた。保険をつかっても介護貧乏になりかねん。私達老人だけじゃなく稼げない若者達も、日本に不要の存在となってきた。行政にとっちゃホームレスもボランティアする人も煩わしい存在なのかもしれない。人は「おぎゃあ」と生まれた時から死は傍にある。生ある者お互いを慈しめば・・・2016/10/21
ちえ
42
食料、医療を届ける活動を続けているホームレス支援団体「TENOHASHI」を立ち上げた筆者が20年以上続けてきた現場から見てきた社会、家族、人、支援の在り方のルポルタージュ。私も仕事上関わる人達に様々な問題があることを感じているが、それは支援に繋がっている人であってそれ以前の人達へ向き合う方たちに頭が下がる。2013年単行本発行、2015年加筆され文庫版発行。<問題解決のために私たちは行動した。そして希望を見つけることができた…本書は希望があることを伝えることで終わりたかった(文庫版はじめに)>↓2021/06/02
壱萬弐仟縁
40
2013年初出、加筆したもの。佐々木誠さん(50代、仮名)は、技術あったのに会社倒産が不幸の始まり。ハロワでもなかなか仕事なし。面接行ったとしても、年齢がね、の一言で敗退。その後、東京でも同じ目に遭う。そして、警備員に、どけ、と公共の場からも排除され、いのちの価値を軽んじられた。低体温、入院、点滴するも、意識不明に。1週間後逝ってしまった(46頁)。技術ある人を不遇にし、最後は相当に人権侵害を受けての亡くなり方。こんな国、先進国でも何でもない。2016/02/23
かんがく
12
著書は精神科医。ボランティアでホームレスの人々へ支援を行う。生活保護、DV、知的障害、精神病、貧困ビジネスと読んでいて気が滅入りとてつもない無力感に襲われる。ただ、ホームレスや生活保護への偏見が少しでも減り、理解が少しでも深まっただけでも読んでよかったと思う。森川氏ほど行動できるのは一部の人かもしれないけど、日本社会の現状を知り、自分がそういった人と関わることがあった時、その人に一人の人間として真摯に対応することは心がけようと思う。現実から目を逸らしてはいけない。全員が読むべき。2019/01/06
lily
11
池袋を中心としたホームレス支援団体TENOHASIの代表である著者が体当たりで挑むホームレス問題。目に見えて少なくなるホームレスの数だが、それはただ公共の場から退去を命じられ、ベンチに寝そべり防止の杭が設置される中でアングラ化しただけ。行政もそうだが本質的には生活保護受給を恥と感じ、「貧困は自己責任」と同調してしまう私たちにも問題がある。行政と民意は合わせ鏡とはよく言ったもの…である。不寛容な社会の中で精神科医でもある著者の目線は一際優しく映る。「器の大きい人」とはこういう人を指すのだろう。頭が下がる。2022/06/02