内容説明
日本で生まれ、育った私たちは、イスラム教徒になった。
日本で学び、働き、生きる、11万人のイスラム教徒。
彼らはこの国で、イスラム教とどう向き合い、どう実践しているのか。
これまでほとんど語られることのなかった「隣人」たちの姿。
彼らの日常を通して、「本当のイスラム教」が見えてくる。
・OLとして働きながら、1日5回の礼拝をいかにこなしているのか?
・自身の入信を、家族に納得してもらえるのか?
・日本式の冠婚葬祭には出席できるのか?
・なぜ一夫多妻制が認められているのか?
9・11直後から、日本のイスラム教徒を取材してきたフォトジャーナリスト。
その10年以上の取材によって、「すぐ隣のイスラム世界」が浮かび上がる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ryo Hirao
12
実地調査を通して見える日本の中のイスラームの姿。イスラームとは「厳しい」宗教なのか、日本の社会になじめる存在なのか、私たちは共存可能なのか。多くの疑問が様々な立場のムスリム、ムスリマの語りを通して解きほぐされていく。何が語られているかと同様にどのような立場の語り主かも考察の鍵となり、いま、あらためて日本とイスラームのつながりを見直す機会となる。著者の中で表現されるイスラームの多様性が、この書の最も大きな価値なのではないだろうか。2015/11/24
makimakimasa
10
国内外出身のムスリムや、周囲へのインタビューを基に構成。シャルリ・エブドの風刺画を転載した東京新聞に対して抗議デモが行われた際、デモに反対したムスリムの声は報道されなかった。デモが平和的か感情的か、主観の問題は噛み合わない。日本の葬式で、一神教だから冥福は祈れないとか、異教徒の真似は禁止だから合掌不可とか、ちょっと驚き。入信した日本人妻に触発されてイスラムを勉強し直すボーン・ムスリム、オウム事件を機に両親に勘当された日本人教徒、取材を受ける事でイスラムに肩入れしてると思われたくない学校や企業、立場は様々。2021/06/19
Aya Murakami
7
本当は昨日読み終わったのですが‥。あまりにもタイムリーなことがおきたのでレビューを今日にまわしました‥。 ムスリムの方々も生身の人間でそれぞれの考えを持っている。東京新聞の風刺画転載事件にはこのような要因もからんできているのかな?と読んでいて感じました。それなのに日本のメディアはデモをするムスリムのことばかりとりあげている現状が‥。 最後に、本書にあたっていろいろなムスリムの方を取材したそうなのですが、「警察ですか?」「公安ですか?」「CIAですか?」と聞き返されたそうです。胸が痛みました。2017/08/18
ミー子
5
世界3大宗教の中で、最も馴染みが薄く、教義も知らないイスラム教。長い歴史を経て多くの人に信仰され続けている宗教には、何か普遍的で本物のものがあるのではないか?と思っている。でも、イスラム教の良さはいまいちよく分からなかった。現代の日本人にとって、イスラム教を理解するのは難しいのかな。ただ、ものすごく国際化している現代日本で、多様性への理解が進んでいることは、この本を読んで感じられた。2021/08/30
いっち〜
5
題名通り、日本社会の中でのイスラム教徒の現状を綴ったノンフィクション。会社や学校で、個人レベルでは差があるものの、組織としてはイスラムへの信仰を好意的に受け入れられている人が多いのが意外だった。また、同じイスラム教徒でも日本人と外国人で扱いに差がある、イスラム圏からの人でも教義を間違って覚えていたり、単なる地域や家庭の習慣と混同していることも多い、東日本大震災の際は在日イスラム教徒からの支援も多く、被災地近くのモスクが支援の拠点として機能した等、初めて知ることや、日本の宗教や習俗との類似点も多かった。2016/04/22