内容説明
明治十年に来日した若き英国人建築家ジョサイア・コンドル。のちに「鹿鳴館」建造担当者となる彼は、お雇い外国人として多忙な日々を過ごすうち、天才画家河鍋暁斎に弟子入りする。一方で、国際商社ジャーデン・マセソン社から、ある密命を帯びていた…。謎に包まれた鹿鳴館を描くという作業は、近代日本そのものを描くこと。鬼才、渾身の明治ミステリー800枚。無念の絶筆作品。【解説】杉江松恋・縄田一男
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
97
北森さんの未完の「白鳥の歌」なのでしょう。再読ですがやはり未完でもこの作品が北森さんの代表作となったのではないかと感じられます。明治政府のお抱え建築技師のジョサイア・コンドルが日本に来る事情(ジャーデン・マセソン社からの秘密の依頼)があり、さらに明治初期の日本政府の不安定な事情などがからんで話が発展します。資料などをかなり渉猟されている気がしました。山田風太郎の明治ものも好きですが、この作品の完成版を読みたかった。2024/02/23
かっぱ
33
暁英とは鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルが河鍋暁斎から授かった雅号。工部大学校第一期生の辰野金吾、片山東熊、曾禰達蔵、佐立七次郎も登場。鹿児島では西郷隆盛による西南戦争が勃発。銀座煉瓦街を設計したトーマス・ジェームズ・ウォートルスの謎の失踪。失われた設計図。明治政府の重鎮・井上馨、グラバー、岩崎彌太郎など明治史に名を残した人物たちも続々登場する。コンドルが国際商社ジャーデン・マセソン社から課せられた密命とは。未完であるのが残念ですが、読み物として十分に楽しめます。2015/05/08
RIN
23
北森さんはどんな結末を用意していたのだろうと思うと本当に本当にこの作品が完結されなかったことが残念で仕方ない。これまでの北森さん作品の良いところをギュッと凝縮したような作品。時は明治。鹿鳴館を造った英国人Jコンドルの目に映る当時の日本の姿が切なくも愛おしい。著者がしばしば描く、人の心や社会が抱える闇が日常とかけ離れたものではなく、誰もが抱える哀しみと強さ弱さとして描かれるところがなんとも哀切を掻き立てる。明治という時代とは一体何だったのだろうと改めて考えさせられる。著者の未読作品を全て読みたいと思う。2012/08/08
備忘録
22
明治期のとにかく形から近代化を目指して外国と対等な外交を目指す日本と 近代化の手助けという形で所謂お雇い外国人を派遣し日本を他のアジアと同様に支配しようと目指す外国や海外の商社 それらの陰での争いに巻き込まれながらも日本を愛し鹿鳴館を建てたコンドルの物語 本当にこの時代の陰でこの争いが起こっていたかのように錯覚してしまうくらい力強く惹き込まれる コンドルの作戦が成功してまさにこれから鹿鳴館の真相が描かれるところで作者急逝による絶筆 そこだけが欠点であろうか、色々想像することはできるが結末を知りたい2025/09/16
onasu
22
一気読みせず、あえて、ゆっくり。自分の中で作品への最大の賛辞です。しかも、触発されて、直接作品とは関係ないですが、以前から訪れたいと思っていたコンドル設計の岩崎庭園にまで行ってきました。だから何、ということはないですが、感慨は一入でした。 それにしても、まいったというか、惜しい人を亡くした、と思う他ありません。先日、蓮丈那智シリーズの最終作「邪馬台」を読んで、渾身の一作と思ったのも束の間、本作に出会えたのですから。ファンとして、不注意の謗りは免れませんが、未完での絶筆が残念でなりません。2012/04/21
-
- 電子書籍
- 【分冊版】竜使の花嫁 ~新緑の乙女は聖…
-
- 電子書籍
- 小動物系令嬢は氷の王子に溺愛される【ノ…
-
- 電子書籍
- 忌み子と呼ばれた召喚士@COMIC 第…
-
- 電子書籍
- 英語史概説 燃焼社セクレタリーブックス




