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内容説明
1943年3月、天皇の発言をきっかけに終戦工作が始まった――
通説を塗りかえる1冊。
1945年8月の昭和天皇の「聖断」は、どう引き出されたのか。これまでの説では、本土決戦が迫る中、徹底抗戦派の陸軍と和平派の対立を天皇が土壇場で裁定したと言われてきた。だが、はたしてそれは本当か? 本書は、アジア太平洋戦争の開戦から終戦までに何度も出された「聖断」をテーマに、天皇と指導者層の対立と妥協の様子を描きながら終戦の真相を明らかにしていく。新たな終戦史の誕生!
[内容]
序章 終戦の通説はどうつくられたか
第一章 終戦史研究と「聖断」
第二章 開戦の「聖断」下る──勝利を前提として
第三章 知られざる「聖断」──勝利から引き分け狙いへ
第四章 対等和平を断念する──終戦工作の本格化
第五章 敗戦容認の「聖断」ついに下る──暗黙の「合作」
終章 「聖断」と終戦の戦後史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
91
太平洋戦争で陸軍は最後まで抗戦を主張したが、昭和天皇の「聖断」で諦めたとする説が広く浸透している。映画『日本のいちばん長い日』の影響もあるが、実際はドイツのスターリングラード敗戦を受けて昭和18年から終戦へ動くよう聖断があった事実を著者は指摘する。承詔必謹の杉山参謀総長の指示で研究が開始され、当初は引き分け狙いだったのが戦況悪化で対等和平を断念し、主戦派の暴発を抑えながら敗戦容認に至るまで終戦派の苦労が描かれる。独裁者がいたドイツは最後まで戦ったが、いなかった日本は「負けるが勝ち」を成し遂げたといえるか。2021/12/14
nnpusnsn1945
68
非常に面白い本だった。終戦工作は、案外早い段階から行われており、陸軍の穏健派がしていたらしい。それぞれの組織も一枚岩でなく、海軍、宮中、外務省にも強硬派がいたようだ。ただ、どれだけ比較的まともな考えを持っていても、戦争を特に指導した大本営内部では、「先制主働」や、「必勝の信念」なる精神主義が横行し、従わないものは前線送りになるなどの懲罰人事(東条英機)の被害を被ることとなった。だが、戦況悪化につれて、強硬論は弱まり、本格的な工作が実を結ぶことになる。ただ、決定するまでの過程で多くの犠牲を出すこととなった。2021/09/26
てつのすけ
27
聖断とは、昭和20年8月の終戦前のことを指すと考えていたが、これよりも前から終戦へ向けて、複数の聖断があったとの考えを理解した。また、言葉の意味から、開戦の聖断もあったことに、自身の勉学不足を実感した。戦争を知ることで平和の大切さを理解できる。本書のような戦争に関するものは、平和を永続するために必要な本であろう。2023/04/29
ナリボー
7
7/10 開戦から終戦にかけて当時天皇陛下がどのような聖断を下したか、周辺の情勢や時代背景がどのようなものだったか、かなり詳細に書かれていて筆者の熱意が伝わった。色々な人の思惑や政治的事情なども面白かった。2021/10/22
カラコムル711
4
天皇の開戦関与についてはいろんな説があるが、最近の研究では客観的に観て彼がOKを出したことは明らかである。「戦争に反対するものの意見は抽象的」との言葉がそれをいいあらわしている。終戦へのはじまりが松谷の起用にあるとしたのは氏の研究が最初と思う。ということは杉山、梅津がそれに関係している。便所の扉といわれた杉山の知られざる一面である。当たり前のことだと思うが、冷静に物事を判断できる人物は陸軍には居たわけである。2016/06/10