内容説明
昭和五年、十歳で渡日後、働きながら文学者を志し、在日朝鮮人文学者の嚆矢として活躍、のちに古代史研究でも大きな業績を残した異才。川端康成、中村光夫、佐藤春夫らに高く評価されながらも「もはや新人でない」からと芥川賞を逸した「朴達の裁判」始め、日大芸術科在学中の習作から壮年期までの小説を精選、小説家・金達寿の真骨頂を示す記念碑的作品集。
目次
濁酒の乾杯
富士のみえる村で
朴達の裁判
対馬まで
位置
祖母の思い出
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
belier
2
ふと手に取った在日朝鮮人作家の短編集。1920年生まれ。戦前と戦後の作品が収録されている。志賀直哉に影響を受けただけに初期作品は私小説。差別などの苦難を糾弾するのではなく、じんわりと訴える作品で嫌いではない。しかし、もはや新人ではないということで、高く評価されたながらも芥川賞をのがした『朴達の裁判』は寓話的。朝鮮戦争の頃の韓国が舞台で、無学な男が刑務所で活動家から教育され、小作人的にとぼけたままだが強権国家に歯向かう闘士になる、痛快さとユーモアのある作品だ。魔術的ではないが、南米文学に似た面白さを感じた。2026/05/24
ソラオ
0
「対馬」までが良い2020/12/14
hosikita
0
「朴達の裁判」と「対馬まで」が特に印象に残った。前者は芥川賞をとれるはずだったというのも納得の面白さ。主人公の朴達をはじめ、登場人物がやけにコミカルで読んでいて楽しくなってくる。まだ朝鮮総聯と決別する前の作品ということもあり、反米・反李承晩的な色も強い。後者は著者らが実際に対馬を目指したときの話を小説化したもの。著名な古代史学者や在日研究者が名前の漢字をちょっとだけ変えて登場する。やっと訪れた解放の後も、祖国分断と独裁政権のために帰郷できない。「そんなことになったのは我々日本人の責任でもある」。まさしく。2020/03/13
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