内容説明
「ナイフ!」ぼくは叫んだ。濁流が隊員を呑む。ザイルを切らねば…。かつて玄奘三蔵が辿った遙か天竺への旅路、あの天山越えに著者は挑んだ。――天安門事件、ベルリンの壁崩壊と歴史は転換期を迎え、著者は各地をさすらう。壁を殴りにドイツへ、河を下りにアラスカへ。そして鶴を見にヒマラヤへ。カラー写真多数を交えて綴る名作『神々の山嶺』の原風景。物語をつむぐ旅人の心温まる漂泊の軌跡。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
28
30代後半の著者。玄奘の跡を追ったり、カヌーに乗ったり。◉懐かしい本。以前のアンダーラインを消して新たに引き直すような読書スタイルに。「人は、その年齢や器量に応じた物語しか生み出せないのである」「そこに転がっている、何のへんてつもない石が正しいと言いきることである」「これはうちで一番いい馬だから…」(ウイグル人の言葉)など。◉体重の乗り切った本書に〈40歳の中2ノート〉というフレーズが思わず浮かんでしまったが悪口ではない。むしろ「14才にしてやるぜ」って言う人もいる。2024/05/23
アナクマ
27
平成の始まり頃。夢枕獏は、ストックしている全ての物語を書き終えることはできないと悟る。野田知佑はユーコン川を下り、青春の記録にケリをつけ、中国では天安門があった。◉あれから30年。作品そのものではなくて、その中に刻印された/置き去りにされた過去の自分がいるために本棚に残された数冊がある。惑い「のたうつ」四十男と、過去の私との一瞬の交点。◉私は、無数のアンダーラインを引き、本書からいくつもの作品の手掛かりを得て、いくつかの国に出かけた。そして、そのころには思いもしなかった場所に生き、じきに平成が終わる。2018/12/30
アナクマ
18
(p.24)五年かかってくっついたレッテルなら五年かかって、それをひっくり返してやろうと思った。◉(p.199)ひとつずつの石や木の根を、ていねいに踏みながら、ぼくは山に登りたいのだ。◉(p.263)稼いで、その金を何に使うのか。…それが、「山だったんだなあ」と、彼はしみじみと言った。◉(p.303)「おれはね、アリにキンシャサで負けた時には、ロープがゆるかっただの、それこそありとあらゆる言いわけをしたよ。マスコミにも、自分自身にもね。それしか方法がなかったんだよ」(フォアマン)→2021/05/03
sataz
0
獏さん、忙しかったときに出歩いていた記録。ヒマラヤに山越えする鶴を見に行ったり、三蔵法師の足跡をたどったり。そういう紀行文のところと、自らの創作に掛ける思いを綴ったところがうまく合っていると思う。2012/04/27
ma-no
0
この時期の半自伝エッセイ、好きです。2000/01/21
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