内容説明
“らせん”をほどいた先に、人類の幸福はあるのか。もはや神の領域ではなくなった遺伝子操作。善意と探究心の裏側でパーフェクトな命への誘惑がうごめく。米国特派員として生命科学研究の最前線を追ってきた朝日新聞記者が見た現実とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Humbaba
8
最初の一歩を許してしまえば、やがては行き着く所まで進んでしまう可能性は高い。子どもに良い環境を与えたい。それを願うのは親心であり、否定することはできない。手段さえ整ってしまえば、その「環境」が生まれ育つためのもののみならず、そもそも遺伝性を選別、そして手を加えることにまで進んでしまうことは避けがたいのかもしれない。2015/12/04
鳩羽
8
着床前診断で重篤な病気や障害を持つ受精卵が選別されることや、出生前診断で人工中絶を選ぶことはすでに行われている。そこからさらに進み、特定の病気になる確率、身体能力、知能指数を受精卵の段階から遺伝子を解析することもできるようになった。遺伝子の編集をして、能力の増強をしたり、良くない因子を取り除くことも可能らしい。環境要因もあれば、あくまで確率なので思うようにならないこともあるだろう。それがビジネス市場を基にした新しい優生学となるのなら、親や生みだした側の権力が強くなりそうで怖い。2015/09/09
よしひろ
5
タイトルからして興味深い本。天才や金メダリストは遺伝的なものなのか。一方で、必ず出てくる1万時間の法則。マジカル・ナンバー。各国、国を挙げて有能な遺伝子を求めて、競争が加熱する。2016/01/24
Sugi Takahiro
5
遺伝子研究の最先端のアメリカでの取材記。 現在、出生前診断によりダウン症などの遺伝病の素因をもって入るか判別できるだけでなく、健常な子でも筋肉の組成や将来の適正について言及できる(精度はあてにならないが)ようになっている。 しかしそこには当然倫理的な問題が含まれている。男女の産み分けはいびつな社会構成を招く、遺伝的差別の可能性、「デザイナーベビー」は許容されるのか、親が究極の個人情報であるゲノム情報を子供が拒否できないまま握る権利はあるのか、それを言ったら中絶はいいのか… 2015/12/22
ハパナ
3
各作用に対する遺伝情報が明らかになったとしても、スイッチのオンオフによっても特性の発現状況が変わってくるみたいです。 作用のタイミングや順番が変われば、特性の発現も違ってくると言う事です。つまり例えば料亭のとても美味しい茶碗蒸しがあって、その食材や分量の詳細が分かっていたとしても、自宅でその味の再現は可能でしょうか。 倫理面の話は置いておいたとして、遺伝子オーダーに関してそれなりの費用や手間をかけた場合に、期待と違う結果になった場合でも受け入れる事が出来るか。ペットに飽きた様な事にならないでしょうか。 2015/11/29