内容説明
あの夏、私たちは「家族」だった――。息子を事故で亡くした絵本作家の千紗子。長年、父・孝蔵とは絶縁状態にあったが、認知症を発症したため、田舎に戻って介護をすることに。父との葛藤と息子の死に対する自責の念にとらわれる千紗子は、事故によって記憶を失った少年の身体に虐待の跡を見つけ、自分の子供として育てることを決意する。「嘘」から始まった暮らしではあるものの、少年と千紗子、孝蔵の三人は、幸せなひとときを過ごす。しかし、徐々に破局の足音が近づいてきて……。切なさが弾ける衝撃の結末――気鋭のミステリ作家が描く、感動の家族小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
140
「ひとは自分に噓をつくために他人に噓をつく。」チャールズ・V・フォードの言葉だそう。「良い結果をもたらす噓は、不幸をもたらす真実よりいい」という諺もある。これまでどれほどの『噓』をついてきたかしれない。誰かのために・・良かれと思って・・その罰は私があの世にもっていきますからーさて、本作は2011年の作品だそう(作品も作家さんもお初だ)虐待を受けていた子を我が子として育てるーなんてことだけではなくて、初めの噓が他方に広がりそしてこんな惨事に。だが不幸にも幸せな結末を迎える時、私の心も浄化された気がする。2024/04/02
hrmt
29
初読みの作家だったが思わぬ佳編に出逢えたようで嬉しい。幼い息子を亡くした千紗子.虐待を受けていた拓未.認知症が進行していく孝蔵。それぞれが噓を塗り重ね、偽りの家族を築いていく。それは不安定であるはずなのにとても幸せそうで、苦しみから目を背ける事は生きる力として脆弱なものであるにしても、人という弱い存在に時に必要な行為であるように思える。生まれて死ぬまでの人の道程で、誰もが幸せを求める権利があるだろう。誰もが幸せになれる噓ならば、それはそれでいいのではないかと思えた。幼い拓未の渇望に最後の一文で涙が流れた。2018/07/04
morinokazedayori
27
★★★★千紗子は、認知症になった父の世話をするため郷里に帰る。そこで少年と出会ったことから、千紗子の生活は大きく代わり始める。子どもの死、離婚、虐待、いじめ、犯罪など、それぞれが様々な苦悩を抱えながらも、大切な人と笑顔で過ごすことで、苦しみを乗り越え成長していく。生きていくってなんて大変なのだろう。医師として、父の友人として、常に周りを支え続ける亀田の存在感が光る。亀田のような人にいてほしいし、亀田のようになりたいと思う。2022/09/18
あー
22
通勤のお供に、少しずつ読むつもりだったのに、先が気になって気になって、休みの今日一気に読んじゃった。お父さんの症状もつらくてしんどくて。そしてラストにやられた号泣でした。2018/12/11
なっち
21
初見の著者作品。面白かった!誰かの為を想い、生涯守れる嘘なら、それはアリなのかもと末尾の文章を読んで想った。2023/10/10