内容説明
シェトランド諸島の地方検察官ローナは、鎧張りの船にのせられ外海へ出ようとしていた他殺死体の第一発見者となる。被害者は地元出身の若い新聞記者で、島にある石油ターミナルがらみの取材を兼ねて帰省したらしい。新任の女性警部リーヴズがサンディ刑事たちとはじめた捜査に、病気休暇中のペレス警部もくわわるものの、本調子にはほど遠い。複雑な人間関係とエネルギー産業問題がかかわる難事件の解決には、ペレスの観察眼と推理力が不可欠なのだが――。〈シェトランド四重奏〉を経て、クリーヴスが到達した現代英国本格ミステリの新たな高み。CWA最優秀長篇賞受賞シリーズ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
306
ペレス警部シリーズのセカンドシーズンに突入。妙に文章が読みやすくなった気がしたけれども、翻訳者は前作と同じ。理由は新登場のメインキャラ、ウィロー警部に負うところが大きい。彼女と相対する他視点人物の表現や、気が短いウィロー警部自身の内面描写などで、自然にユーモアが生まれている。ペレスとの関係が今後どう変化していくのか楽しみ。事件の方は、ローナの関わりで興味を引っ張る。最後に明かされる犯人に、意外性はあるが衝撃は少なく、作を重ねるごとに、その傾向が強くなってきているので、次あたりで起死回生をして欲しい。2023/01/11
ケイ
129
シェトランド諸島シリーズカルテットでの最後の展開に納得出来ず、シリーズに対する評価が下がってしまったのだが、新シリーズのこの作品は良かった。すみずみまでキレイに絡み合っていた。最後の検事の言葉が示唆するところからすると、次も期待できそうだ。前シリーズでは、女性を起因としながらもお金絡みの話が多かった。今シリーズは、女性を中心にして絡まったものを、ペレスとサンディプラスアルファで解きほぐしていくのかしら2023/04/08
ふう
88
シェトランドシリーズが、これでいいの?という終わり方だったので、フィクションなのに納得できずにいました。べレス警部にももう会えないのかと寂しかったのですが、また会えました。ぐだぐだでもボサボサでも、べレスに会えただけでもうれしいのに、以前のように仕事に向かっていけるようになって一安心。「(仕事に)行かなきゃだめよ。お金が必要だもの。遠足に150ポンドかかるのよ。」というキャッシーの言葉にべレスも救われたけど、わたしも救われました。おもしろく読み進めていたのですが、終わるのがもったいなくて最後はゆっくり。2016/10/21
ナミのママ
74
〈シェトランド四重奏〉に続くジミー・ペレス警部シリーズ5作目。前作から半年後、まだ心の傷が癒えず病気療養中のペレスは、島内の事件を手伝う形から参加する。陰鬱な風景描写は減ったがペレスの鬱々とした様子がずっしりと重い。水がテーマのためか島内の自然描写よりエネルギー問題など現実的な視点。育児優先、趣味を楽しむ、暮らしに密着した手工芸など生活様式が日本との違いを感じてミステリとは別に興味深い。殺人事件解明の派手さはなく、閉じられた島での人間関係に少しウンザリしつつ、真相とそこに至る心情は意外だった。2023/04/06
mii22.
64
ペレス警部新シリーズ1作目。シェトランド四重奏衝撃のラストから半年後。まだ立ち直れないペレス警部は影が薄く、はじまりは殺人事件の捜査責任者としてやって来たウィロー警部と、死体発見者となった検察官ローナとの女性対決の様相。が、やはりシリーズの特徴である誰もが顔見知りであり秘密を抱えているという人間関係の複雑な事件へと発展していく。今の生活を守るため誰もが忘れてしまいたい過去からは逃れようと嘘をつく。人の弱さ脆さが罪をつくり、人の強さ優しさが心を救済する。今後もペレス警部を(いやジミーと呼ぼう)見守りたい。2018/08/01
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- 和書
- 『漢書』百官公卿表訳注