内容説明
テニス少年の底抜けに明るく切ない青春物語。
ウルトラ体育会系だけれども活字中毒でもある文学少年、侃(カン)は、高校に入り、仲良くなった友だちに誘われて、テニス部に入ることになった。初めて手にするラケットだったが、あっという間にテニスの虜になり、仲間と一緒に熱中した。テニス三昧の明るく脳天気な高校生活がいつでも続くように思えたが……、ある日、取り返しのつかない事故が起きる。
少年たちは、自己を見つめ、自分の生き方を模索し始める。
「恐ろしいほどの感動が、俺を圧倒した。若く溌剌とした魂の輝きがもし目に見えるとすれば、朝の光の中できっと俺はそれを見たのだ。
瞬くように過ぎ去るからこそ、二度と戻れないからこそ、このきらめくような瞬間はかけがえのない一瞬だった。」(本文から)
少年たちのあつい友情と避けがたい人生の悲しみ。切ないほどにきらめく少年たちの日々の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょこまーぶる
60
若いって素晴らしいことだなぁ~と純粋に思わせてくれた一冊でした。活字中毒のスポーツマンのテニスに出会ってからの話なんですが、前半のテニスに夢中になっていく過程は、真っすぐで熱を感じてしまいましたね。若いからこその世界のように思えますね。でも、後半は事故を契機に友人との関係の距離とお互いに本音を伝えるまでの長い時間に青春の葛藤を感じて、個人的な思いですが妥協を美徳とする多くの大人にも彼らの様な時代があったのになぁ~と自分自身にも置き換えて考えさせられましたね。若かった自分自身を思い出すには適している一冊。2018/01/30
心
41
図書館本~!ウルトラ体育会系なのに活字中毒の侃。高校に入って、活字中毒なのを隠そうと思った矢先に、同じクラスになり…羽鳥貴之・日高侃…たまたま前後の席になった貴之に誘われて、侃はテニス部に入ることになった。テニスの練習や仲間と過ご日々は、楽しくて、とても充実していた。昨日から今日。今日から明日へ。いつまでも続くと思っていた…当たり前の様に過ぎてた時間が、一瞬で大きく変わってしまった。過ぎてしまった時は、戻すことは出来ない…。それぞれが、悩み・受け入れ・出した答えは?心に響く我が子におすすめしたい1冊!2017/03/24
ぱせり
14
カラス坊と貴之は似ている。久しぶりに『オン・ザ・ライン』を読んでそう思った。どん底を体験している者が、自分と向かいあう用意をするための場所(形のあるものでも、ないものでも)を持っていられたらいいな、と思う。それまで待ってやれる周りであったらいいな、と思っている。単行本も文庫本も表紙は青空。でも、違う青だった。二冊揃って物語の進行を表しているようだ。 2015/07/12
Kazuko Ohta
12
暑くてたまらん今日この頃、清々しい表紙に惹かれて初めての作家を。国内外でしょっちゅう児童文学賞を受賞している人らしく、これも2012年の青少年読書感想文コンクール指定図書。本を読むのが大好きなのに、文系男子と思われるのが恥ずかしくて、高校入学と同時に誘われるままに硬式テニス部に入部したカン。2部構成で、1部はその高校生活、2部は訳あって田舎の祖父宅で過ごす夏休みが主。テニスのシーンは言うほどは出てこないけれど、テニスの魅力は伝わってくる。青少年に推奨したくなる安心の1冊。球も心も、拾って拾って拾いまくれ。2017/07/18
もり
9
最近の自分には珍しく、独力で手に取ったテニス題材の作品。あとがきによると児童書として発表されたそう(あとがきを読むまで児童書だとは気付かず)。スポーツと友情、恋愛、挫折、復活などと王道の材料がてんこ盛り。構成や小説としての仕掛けなどは本好きな大人ならたぶんどこかで体験済み。若干の失望を感じましたが、本作は未来の「本好き」を生み出すべく、ワザとそんな作りにしているそうなのです。それならば腑に落ちます。で、作品としては悪くありません、決して。それなりの年齢層に安心して紹介できる一冊です(^^)2015/08/06