- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
昭和18年の秋、家族六人を支える中年の版下職人、松本清張のもとへ突然の召集令状がきた。34歳にして戦場へ送られた体験がこの作家の根底に残した深い傷へ、担当編集者だった著者が迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さえきかずひこ
6
文藝春秋で清張番記者(担当編集)のひとりを務めた筆者による回想記。編集者として体験したエピソードの数々から、創作への鬼気迫る清張の生き様が感じられる。読んでいて思わずたびたび息の詰まるような気持ちになったのは、清張の従軍時代の屈辱から身近な元軍人(自分の亡祖父)の骨身を侵した労苦に思いを馳せたから。清張を反権力や反戦の作家として捉えている筆者の近視眼的な理解には疑問を感じなくないが、しかし高度成長期に清張作品が人々にどのように読まれたかを考えるよすがとなる一冊である。2010/11/02
wang
4
担当編集者だった著者が、松本清張の小説が緻密な現実取材の上にどのように虚構を交えて作劇しているのかを分析してみせる。実際に小説を読み、また編集の合間に聞いた著者の思い出話などから推測を組み立てられるのは長年行動をともにした著者ならでは。考古学への傾倒や文壇批判などが現れる小説の話が中心。特に「行者神髄」は著者が清張と一緒に体験したことが小説中に記述されていて、創作と実体験の対応関係がわかり興味深い。2012/10/16
おらひらお
4
2008年初版。ほかの本では清張は軍隊生活を苦にしていなかったと書いてありましたが、本書では作品を通じてみた清張の軍隊観をうまく抽出できています。途中、やや中だるみしますが・・・。2011/10/19
か〜ら
3
徴兵の選択に何者かの作為が働いているのではないか。松本清張が自身の召集に抱いた疑問が『遠い接近』に結実する迄で。元編集者が作家の創作裏話を綴る。社会的訴求力は小説そのものの方にある。寧ろこちらは作家の横顔紹介的な一冊。然し清張と徴用とを結びつけて語る視点は珍しい。興味深く読める内容になっている。2009/04/08
midnightbluesky
3
清張さんが人生の中で唯一、精神的に解放された日々のこと。