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内容説明
昭和18年の秋、家族六人を支える中年の版下職人、松本清張のもとへ突然の召集令状がきた。34歳にして戦場へ送られた体験がこの作家の根底に残した深い傷へ、担当編集者だった著者が迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
MASA123
10
松本清張の軍隊時代の話は、興味深かった。太平洋戦争後期の韓国の日本軍基地に駐留し、軍医の補佐を担う衛生兵として2年間の軍隊生活を送った。衛生兵と並行して内務の仕事も課され、飯上げ(食事の世話)、使役、洗濯、掃除などの雑務もこなしていて、多忙だったようだ。・・・こんな雑事の繰り返しで一日が過ぎた。何も考えることはなく、思考が停止したまま松本清張は三十代半ばの壮年期を過ごしたのだ。なんという時間と才能の消費だったろう!・・・と筆者の森氏の文章が揺れる。2026/05/04
さえきかずひこ
6
文藝春秋で清張番記者(担当編集)のひとりを務めた筆者による回想記。編集者として体験したエピソードの数々から、創作への鬼気迫る清張の生き様が感じられる。読んでいて思わずたびたび息の詰まるような気持ちになったのは、清張の従軍時代の屈辱から身近な元軍人(自分の亡祖父)の骨身を侵した労苦に思いを馳せたから。清張を反権力や反戦の作家として捉えている筆者の近視眼的な理解には疑問を感じなくないが、しかし高度成長期に清張作品が人々にどのように読まれたかを考えるよすがとなる一冊である。2010/11/02
wang
4
担当編集者だった著者が、松本清張の小説が緻密な現実取材の上にどのように虚構を交えて作劇しているのかを分析してみせる。実際に小説を読み、また編集の合間に聞いた著者の思い出話などから推測を組み立てられるのは長年行動をともにした著者ならでは。考古学への傾倒や文壇批判などが現れる小説の話が中心。特に「行者神髄」は著者が清張と一緒に体験したことが小説中に記述されていて、創作と実体験の対応関係がわかり興味深い。2012/10/16
おらひらお
4
2008年初版。ほかの本では清張は軍隊生活を苦にしていなかったと書いてありましたが、本書では作品を通じてみた清張の軍隊観をうまく抽出できています。途中、やや中だるみしますが・・・。2011/10/19
Hiro
3
清張の時代物傑作選の巻末鼎談での北村氏の発言が本書を読んだきっかけ。召集令状は健康な男子なら誰にでも平等に来るものと、漠然と私は思っていたのがそうでもなかったらしい。そこには兵事係という役人はじめ戦前戦中の官僚機構の陰湿な作為があったという。清張はそのことを遠い接近に書いている。本書はその作品の元となった清張の戦争体験を担当編集者だった著者が清張の談話や文章の中に探っていくエッセイ。途中に戦争とは関係ない、清張のアカデミズム批判、文壇批判の逸話が延々と語られるのが余計だが、軍国日本の嫌らしさをまた痛感。2025/08/02
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