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内容説明
関東大震災の三年後に始まった戦前昭和とは、震災復興=国家再建の歴史だった。社会主義、議会主義、農本主義、国家社会主義という四つの国家構想が、勃興しては次の構想に移っていく展開の過程として、戦前昭和を再構成する! (講談社選書メチエ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
51
「公益優先」で経済を統制すれば国民生活はどうなるか?という言い方もできます。本書によると、国民生活の細部にまで、国家が介入してきた様子が書かれています。「公益優先」というのは、「国家目的に副ったことを先にやる云ふ意味(P207)」です。・結婚式で「派手」な披露宴は控える。近親者に茶菓子を出す程度に(P205)・「ドライブ」目的の自動車使用の抑制(P204)・「不急不要」の電力使用の制限(P205)。そもそも「派手」とか「ドライブ」とか「不急不要」ってどうやって決めんの!? 2013/04/03
えちぜんや よーた
14
現代につながる話が多い。私がビックリしたことが2点→1.「1938年の厚生省の創設(P197)」2.「1937年の国策政策研究会(近衛文麿のブレーン集団)(P198)最重要課題が電力国家管理法案」 次の本と合わせて読むことをおすすめします。 1940年体制(増補版) http://book.akahoshitakuya.com/b/4492395466 松永安左エ門 http://book.akahoshitakuya.com/b/4623040348 2012/07/31
かんがく
9
なんて面白くて巧みな構成だろうか。この本が出版された一年前に起きた東日本大震災を意識しつつ、昭和改元前に起きた関東大震災から叙述をはじめ、その状況の中で活発化した社会主義(共産党と無産政党)、議会主義(政友会と民政党)、農本主義(五・一五事件)、国家社会主義(革新官僚と近衛新体制)を章ごとのテーマとしつつ通史的に戦前昭和の20年間を描き切る。坂野の『近代日本の国家構想』でも触れられていたが、民政党の社会民主的姿勢と岡田内閣の下での社大党・統制派・革新官僚の協調は、当時の日本を理解する上で重要な視点である。2020/10/11
またの名
8
大震災は分断されていた人々をひとつに統合するキズナが回復する兆しとなる、と考えたのは芥川龍之介。その後の復興とともに激動の昭和を主導しようと企図する様々な社会構想、つまり理論にばかり専念した挙句多くの者が転向して潰えた社会主義、昭和維新を唱えて二大政党制を一瞬だけ成就した議会主義、農村の生活への回帰を謳う農本主義のいずれもが頓挫し、ただ国家社会主義(ファシズム)のみが仮初めの統合を実現した変遷を追う。四つの視点が単線的になりがちな語りを巧みに重層化して、明らかに現代を意識させる筆を読み易くかつ面白く補強。2016/06/24
politics
7
社会主義・議会主義・農本主義・国家社会主義の四つの国家構想が衰亡を描いた一冊。どの国家構想もそれなりの展望を見せるものの、いづれも破綻して行く姿は既にその後の敗戦を見通しているようだ。社会主義者である山川均の政治思想は矢張り興味深いものがあるし、国家社会主義については戦後にどのような影響を与えたのか関心がある。2022/03/26