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内容説明
百科事典を丸ごと暗記、二十以上の言語を解した、キューバ独立戦争参戦といった虚実さまざまな伝説に彩られ、民俗学、生物学などに幅広く業績を残した南方熊楠(みなかた・くまぐす)。「てんぎゃん(天狗さん)」とあだ名された少年時代、大英博物館に通いつめた海外放浪期。神社合祀反対運動にかかわり、在野の粘菌研究者として昭和天皇に進講した晩年まで。「日本人の可能性の極限」を歩んだ生涯をたどり、その思想を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
337
本書は南方熊楠の生涯を淡々と書いているのにとてもおもしろく読めた。それだけ南方熊楠の人生が伝説だらけで面白いということだなと感じた。しかし大学時代に正岡子規と秋山真之の2者と同窓生だったとは坂の上の雲でも登場したらカオスになりそうw。2016/01/28
白パラガス
35
南方熊楠という人物を、一言で定義するのは難しい。〈民俗学者か、生物学者か、それとも粘菌研究者か、あるいは博物学者か——。どれも当てはまるようだが、どれも超え出てしまっているようにも思われる。〉南方熊楠の業績は、分野を超えて多岐にわたる。どうやら熊楠の中の「境界」は、普通よりも曖昧にできているらしい。自己と他者、男と女、夢と現…。植物と動物の中間生物といわれる粘菌に興味を持ったのも、熊楠自身が自己を定義したかったからなのかもしれない。先日訪れた南方熊楠記念館の『十二支考』の腹稿を見ながら、ふとそう思った。2019/09/02
うえぽん
32
伝説多き知の巨人の実像に迫ろうとした意欲作。著者が官僚出身エリート学者と言う柳田國男をして、「普通の人の為し得ないことのみを以て構成」し、「日本人の可能性の極限」と言わしめた人物であるが、この本を読めば、その非凡性、空気を読まない特性に自らが苦しんだ側面も多かったように思われた。最近の用語だとgiftedだが、そんじょそこらのgiftedではなかったということだろう。日米での生物蒐集と海外学術誌への投稿というグローカルかつ自由奔放な行動は、時代を大きく先取りしており、小心・内向きな令和人との好対照をなす。2023/11/19
活字スキー
27
かの柳田國男が「日本人の可能性の極限」と称した日本史上屈指のブッ壊れキャラ。いかめしい名前と「粘菌の研究で有名な博物学者」というボンヤリとしたイメージしか知らなかった南方熊楠をもっと知りたくて。幼い頃から非凡さ全開で「てんぎゃん」と呼ばれたそうだが、本当は天狗にさらわれたのではなく、ナメック星にアブダクションされて最長老さまに潜在能力を引き出されたんじゃないのかと思うほど、やることがいちいち極端。過剰なまでの集中力や記憶力、発想力は、少なくとも定型発達ではあり得なかっただろう。2023/06/23
Tadashi_N
21
知の巨人は、類い稀な才能と粘り強さでできている。2016/02/25