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内容説明
非日常的な空間である聖地―。観光地として名高い聖地には、信仰心とは無縁の人々が数多く足を運んでいる。さらに近年では、宗教と直接関係のない場も聖地と呼ばれ、関心を集めている。人は何を求めて、そこへ向かうのか?それは、どのような意味を持つのか?サンティアゴ巡礼や四国遍路、B級観光地、パワースポット、アニメの舞台など、多様な事例から21世紀の新たな宗教観や信仰のあり方が見えてくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
373
著者は若手の宗教学者(むしろ宗教社会学?)。「聖地」と「観光」を基軸に聖地巡礼を読み解いてゆく。本来、これら2つの言葉は相反する概念のはずなのだが、実はそれほど単純ではない。なぜなら、今や(少なくても近代以降は)宗教が求心力を失うのだが、世俗の観光がそれにとって代わる。かの「カミーノ」ーサンチアゴ巡礼でさえも、巡礼者の大半はカトリック信仰からは遠い。まして、サンチアゴ(聖ヤコブ)への敬虔な想いからはさらに距離がありそうだ。もちろん、21世紀以降爆発的なまでの人気を誇るのは、それに代わる力があるからである。2021/03/23
HANA
50
聖地巡礼はかつて宗教行事であった。ただ宗教が希薄な現代ではそれと観光は切り離せないものとなっている。本書では礼拝と観光という二極化の対立という視点ではなく、聖地が伝統宗教下での礼拝とは違った仕方で受容されているという視点が取られていてその一点で目を開かされた思いであった。例に出されているのはサンティアゴの巡礼路や富士山、そして青森のキリストの墓等。サンティアゴは旅が目的とされている点、富士山はユネスコという宗教外からの影響、キリストの墓は地元の視点がそれぞれ提示されており、どれも教えられる事大であった。2015/03/12
佐島楓
49
お若い研究者がお書きになったからか、とても読みやすかった。鷲宮神社など、サブカルチャー的なスポットまで考察してあるので、とっつきやすい。既存の宗教の信仰というより、目新しい体験を求めて現地に向かうという現代の「巡礼」。時代と共に変容していく人の心の在り方がとても興味深かった。2015/04/25
きいち
32
ポジティブでプレーンな知ることの喜び。◇まず驚かされるのが、道の世界遺産、巡礼の典型とされるサンティアゴ・デ・コンテスポラの繁栄がこの20年ほど、それも火をつけたのが小説と女優の体験記だった、ということ。信仰心の強い人は終着の聖地が目標だからタクシー飛ばしていくけど、癒しや自分探しの人は巡礼路そのものが目的だから「歩き」を選択する、ああ、四国もそうだもんな、なるほど!◇宗教はこうして様々な体験を取捨選択しつつ一人ひとり構築するものになってる、だから青森のキリストの墓も、らき★すた神輿も紛れもなくホンモノ。2015/03/28
リキヨシオ
26
聖地巡礼は宗教の創始者、聖人の生前関わりがあった場所、神や精霊といった存在と関わる場所を巡る宗教色の強い旅だった。しかし現代では宗教の影響が低下して宗教色と観光色の融合が起きた。エルサレム、メッカ、ガンジス川、比叡山、高野山、出雲神社、明治神宮、サンティアゴ巡礼、四国遍路、エアーズロック、聖地の切り取りが誰でも体験できるようになり、かけがえのない出来事とどこにでもある出来事が共有できるようになった。さらに世界遺産、パワースポット、アニメなど口コミや手作りの聖地巡礼が活発になり聖地巡礼は一般にも浸透した。2016/04/10