内容説明
三保の松原に舞い降りた天女の妙耶は、羽衣を盗賊に盗まれてしまう。その賊に親と許嫁を殺され、敵討ちを誓った菓子職人の太一と共に、妙耶は盗賊の行方を追う。そんな月日の中で市井に交わり、親子の情や、よすがなき女の哀しみ、職人がもつ矜持など、人間ならではの姿を目の当たりにしてゆく。哀歓に満ちた連作時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
100
天女が江戸の日本に舞い降りて自分の前世を思い出すお話。ずば抜けた傑作ではないと思うが、楽しく読めた。何よりも和菓子とお酒が好きという天女紗耶が面白い。浮世離れした存在ながら、ふわっと江戸の人々に溶け込んで、人間の喜びや悲しみ、苦しみを理解していく。このあたりのプロットは、私の好きな映画「ベルリンの天使の詩」に共通するところがあった。それから和菓子の描写に精彩があって、読んでいると自然にお腹が空いてきた。天女紗耶があの世に帰らずに、この世で極楽を見つける結末は人間臭くて感動的。2017/01/08
カピバラ
35
さらっと読めました。妙耶の天真爛漫さがほほえましく、お菓子の描写が美味しそうだったー。ラストの終わり方は予想できたけど、読後感が良かった。2015/10/01
akio
28
羽衣伝説をモチーフにした時代小説。ヒロインが天女という型破り設定でコミカルな世界観です。話の筋は見えるものの、それでいい!、と思える心地良さ。欲を言えば、登場人物たちをもう少し掘り下げて欲しかったかなとも思います。2020/04/07
あかつき号
12
初著者。すいすい読了。ストーリーはよくある話だけれど、お菓子の描写に垂涎。ひとときの夢のような作品。2016/05/08
むつぞー
7
三保の松原に舞い降りた天女・妙耶。しかし羽衣を盗賊に奪われてしまった。その賊を追っていた太一とともに江戸へ…。 何も知らなかった天女。お腹が空くことも感情も…でも羽衣を取り戻すまでに人に、それぞれの気持に触れていきます。この感情を理解していくまでの描き方もとても良かったです。 菓子屋の若旦那だった太一の存在もあって、いろいろな和菓子が登場するのも良い彩りでしたね。 面白い作品でした。あっさり1冊で終わってしまうのがもったいない。もう少し長い話にしても良かったと思いますね。2015/06/20