内容説明
なぜわたしの人生には、幸せなことしか起こらないのか? 美咲は、古びたアルバムを開いた。彼からのプロポーズ、大学合格……そこには様々な幸福の光景が。ところが、一枚の写真から蘇ってきたのは、(自分は幼い頃に死んだ)という、あまりにも鮮明な記憶だった。混乱する美咲に母が語り始めた、戦慄の「家族の物語」とは? 悪夢と惨劇に彩られた恐怖の連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
66
まともな登場人物が一人として登場しねぇ。といういつもながらの著者節が発揮された一冊。溺死した記憶を持つ女性、完璧な子供を産もうとする母親、こう書けばホラー要素たっぷりなんだけど、実際は考え方がアレすぎてこちらとしてはもう笑うしかない展開。特に第二話の子供を産もうと決めてからのアレコレは、もうほとんどコントとしか思えない。独特な論理で動く人間が登場するのは著者の他の小説と共通しているが、それが最も極端な形で出ているのでこちらとしても引き攣った笑いを浮かべるしか出来ないという、ある意味怖い怪作でありました。2024/07/02
カムイ
46
小林泰三、6冊目。前2作は消化不良だったが今回はスマッシュヒットでした😱😱😱🎶(清浄な心象)の人はいるんじゃないかと完璧な子供が欲しいと願望するのは狂気を通り越して🤣🤣🤣笑うしかない。他の短編も作者の鋭い着眼点に唸ります、ホラー℃は低めではあるが背筋は冷たくなるともに隣人や幸福そうな家庭には一皮剥けば狂気に変貌するかもしれない❗️表紙絵の女の子はやっぱ死んでいるのか想像の域をでないが幸福な記憶が書き換えられるのも、映画(トータル・リコール)をふと脳裏に蘇ってしまった作品世界とは全く関係ない2022/01/29
みや
39
幸せな人生を歩んできた自分が幼い頃に死んでいたことを思い出した少女の真実を探る連作ホラー。疑いもしていなかった土台を壊されて谷底へ落下するような不安に襲われる冒頭から始まり、章を経るごとに狂気の増す周囲に振り回されて心が麻痺していく。生と死の狭間が抜け落ちているような薄気味悪さに心躍った。各章で異なる主人公が、会話は成立するのに噛み合わない会話を続けていき、相手と自分どちらが狂っているのかを見失っていく感覚が凄く良い。学校での集団私刑はまさかのグロ展開で興奮した。無邪気な地獄絵図は最高に胸糞悪くて大好き。2019/09/03
あや
28
今まで読んできた小林さんの本とはテイストが異なっているように感じ、正直最初は読むのに結構エネルギーを使いました。しかし途中からは人間の極端な歪みっぷりが滑稽になってきて、少し歪んだ論争が興味深くなってきました。幸福、清浄、公平、正義、救出、言葉自体はプラスのイメージしかないはずなのに、ここまで歪められると異常さが感じられますね。しかもここに存在する登場人物たちはそれが正しいと信じきっているぶん達が悪い。特に「公平な情景」は正直現実にありそうで怖いと思った。シュールなのに現実味がある分、恐ろしさが際立つ。2013/06/01
マッちゃま
27
狂った話だった。噛み合わない会話からスタートする氏らしい展開。章が変わり視点人物も変わるが読み進めていくと地続きの話だと気付く。章毎に人物が変わり、不気味な人物(時には視点人物が不気味だったり)が登場し、驚愕のラストへと向かう。最初は短編集かと思っていましたので話しが繋がった時は、えっ!?みたいな軽い衝撃でしたが、裏に書かれた粗筋にも連作集とあったので僕の読み落としでした(苦笑)こんなワケワカメな人物って近くに居そうで、そう考えると怖くなっっちゃいますね。2018/10/13