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内容説明
●炉心屋は真夜中にデータを改竄●ボヤは消さずに見て見ぬふり●アラーム・メーターをつけていたら仕事にならない●燃料プールに潜る外国人労働者? ●原発施工者が一番地震を恐れている●定期検査の短縮で増える燃料漏れ●失われゆく熟練の技……3・11以前、平時の原発はどんなふうに動かされていたか? そこで働いていた6人の人生と証言から浮かびあがった驚きの実態とは? 原発をゼロから考えるための必読書。(講談社現代新書)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
59
音楽家でありエッセイストでもある1981年生まれの著者が原発の作業員から現場のリアルを聞き取る一冊。 原発の作業現場にはトイレがなく放射性廃棄物には労働者が残した人糞が含まれるという話。原発の運転効率を高めるため点検期間が短くなると作業員のノウハウの継承が途絶え、安全よりもスケジュールが優先されること。点検をやりすごすため原子炉のデータを運転員が書き換えていたこと。放射線量の高い区域には外国人労働者が高い賃金で作業していること。 特定の立場に与せず事実を淡々と記すところにじわりとしみ出す迫力を感じます。2020/05/30
ばんだねいっぺい
29
まさしく負の装置。どうにかならないだろうか。自分も人を踏んづけて生きている。2016/03/22
リキヨシオ
24
3・11前、ある本で「危険じゃなく楽にお金が稼げる安全な仕事」として原発が紹介されていた…そのことを思い出して怖くなった。原発安全神話…安全だから事故が起こる事すら想定しない。神話だから事故自体隠蔽される職場。危険だといけないから低線量被曝者の存在がうやむやになる。人材使い捨ての劣悪な職場環境を生み出す東電と企業間の多重請負の構造。法の目をくぐるために用意された外国人原発労働者の存在。安全神話の真実に衝撃をうけた!まずは原発の労働環境から考えないと…そもそも原発をビジネスと結び付けたのが間違いだと感じた。2015/07/22
昭和っ子
22
災害下でなくても原発は危険な職場だったのだ、という事が、改めてはっきり書いてあった。表に出て来ないのは、安全神話の前に、そこに職を得て生活が成り立っている多くの人が存在していたから。「踏んずける側と踏んずけられる側の境目は実はあいまいだ。何かのきっかけで、人は理不尽でシビアな世界に生きざるを得なくなる。自らが安泰だからといって社会の暗部に無関係を決め込む事は、将来の自分、自分の子孫や近しい人がそうした場所で苦しむ可能性を肯定する事だ」スキーバスの事故、マンションの杭偽装やらも思い出し、この言葉を心に刻む。2016/03/08
nbhd
21
ここ数年、好んで聴いている「ピアノ弾き語りの音楽家」が書いた本が書店に積まれていたので、思わず手にとった。ゼロ年代の原発労働者の3.11以前を聞き書きしたもの。待ち合わせ場所であいさつして、どこどこの喫茶店へ、あるいはそこにあるベンチで…そんなディテールから始まって原発労働者が話すのは…下請け孫請けだから、労働者はちょっとやそっとの放射線量下だったら”言われなくたって”働くし、トラブルを報告したら逆に仕事にあぶれちゃうからもちろん隠し通すよね、とか。等身大に考えて、それってありなのっていうスタンス。良い。2015/06/24