内容説明
植物研究に生涯を捧げ、在野の研究者ながら偉大な業績のゆえに「植物学の父」と呼ばれる牧野博士。この稀代の碩学が、「馬鈴薯の名称を断乎として放逐すべし」「丁子か丁字かどちらだ」「ナンジャモンジャの真物と偽物」等、草木の名称や分類に関する通説の誤りを喝破。植物への情熱に支えられ、権威におもねることなく持論を開陳した興味深い随筆集。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
59
日本の「植物学の父」は怒っている。そんなに怒らなくてもいいのに、と思うが、それが面白くてつい読んでしまう。ジャガイモは断じて馬鈴薯ではない。楠はクスノキでない、楠はユズリハでもない、クスノキは樟であり中国ではナンという。要するにただひたすら、植物の和名を中国から移入したときに生じた誤りを正そうとしている。そこには明治のアカデミックな学者の権威に決しておもねない気概(牧野氏は在野の研究者)と、江戸時代の文人の植物知識の欠如を正そうとする信念(本居宣長だけは褒めている)があって、そこが面白くてたまらないのだ。2016/07/14
しゅん
12
馬鈴薯とジャガタライモの違いをはじめ、実際の植物と名称の間違い、漢語と和語のとり間違い、由来の間違いなど、植物の名称に対してとことん厳しい一面を示す牧野富太郎。特に大槻文彦の『大言海』に関しては、敬意も示しつつ繰り返し誤りを批判している。「じゃないか」「よいのダ」など、1862年生まれの著者と考えると異様に砕けた語尾を使っていて、ナンジャモンジャの随筆ではずっと語尾を「もんじゃ」とする遊びを見せる。万葉集にも通じている人間の文体として、折口信夫を思わせるところもある(ちなみに牧野の方が24歳年上)。2023/05/17
tsumugi
0
元気がよい。何となく色んな植物の解説的なものを想定していたのだけど、名前の正否について色んな人に喧嘩を売りまくっていてそれはそれで面白かった。多少名前が違っていても良くない?とか思ってしまうど素人だが良くないんですよね、すみません。膨大な研究に裏打ちされているからこうも断言できるだろうなと思うと頭が下がる。正直、読み物として面白いわけではないけど、牧野先生の性格の一端が覗けて興味深かった。2023/12/09
-
- 電子書籍
- 身代わりの花嫁【分冊】 10巻 ハーレ…
-
- 洋書
- The Oresteia