内容説明
ドイツ、2005年8月。警察署に復帰した刑事ピアを待ち受けていたのは、上級検事の自殺だった。時を同じくして、飛び降り自殺に偽装された女性の遺体が発見される。実際は動物の安楽死に使用される薬物による毒殺で、夫の獣医や彼の働く馬専門動物病院の共同経営者たちが疑われる。だが刑事オリヴァーが指揮を執る捜査班が探るうち、被害者へのとてつもない憎悪が明らかになり、さらに背後に隠されたいくつもの事件が繋がりはじめる。謎また謎の果てに捜査班がたどりつく真相とは。〈ドイツミステリの女王〉の人気に火をつけたシリーズ第1弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
402
ドイツのミステリーといえば、まずはシーラッハが思い浮かぶ。ネレ・ノイハウスは初読。フランクフルトの郊外を舞台にはしているものの、あまりドイツらしさというのは感じられない。シリーズ第1作なので、次巻以降はそうではないのかもしれないが。オリヴァーとピアの組み合わせはかなりいい感じだ。警察小説としても、小さな核から次第に膨らませてゆく手法が成功しているといっていいだろう。デーリングへの私刑を見逃すあたりの演出も気が利いている。次作以降も期待が持てそうだ。2023/08/01
W-G
370
段々一冊が分厚くなっていくシリーズ。翻訳順ではなく、本来の刊行順で追うことにした。読み出してすぐに、これはミステリとしての質の高さよりも、キャラ追いをするタイプのシリーズだと気づく。主人公コンビがかなり無能に感じられるが、これは最初だけなのだろうか?オリヴァーの描かれ方を見る限り、むしろもっと悪化していく予感しかない。重要な手掛かりを後になって「そういえば…」と思い出したり、私情全開で捜査にあたっている場面が多く、結局犯人も成り行きで馬脚をあらわしただけで後半が盛り上がらない。『深い疵』までは我慢か。2025/02/26
ちょろんこ*勉強のため休止中
182
被害者は悪女というより、金銭にがめつく嫌な女。登場人物たちも人間性を疑いたくなるような設定な上に、魅力の乏しい人ばかり。悪なら悪なりに徹底していればそれなりに惹きつけられるのだが、中途半端なせこい悪なのだ。主人公の刑事の人物像もつかみにくい。刑事とは思えないほど根性なしでヘタレっぷりは憎めないが、キャラが薄く印象に残らない。ミステリーとしては、そこそこ入り組んだストーリー展開。ラストは思いのほかあっさりしていたが、意外と飽きることなく読了した。題名は秀逸だと思う。2015/07/06
紅はこべ
155
『深い疵』に比べると、当然ながら、深みが足りず、若書きの印象は否めない。この悪女というのは、本当にいわゆるビッチですね。ファムファタール的な悪女だったら、もっと深みが出たかもしれない。オリヴァーが容疑をかけた女性から空手の技をかけられるシーンは笑えた。2015/10/21
ゆいまある
142
ドイツの一部書店ではハリーポッターより売れたという大人気ミステリシリーズ1作目。深い疵から読み始めて、シリーズと気がついて買い直した。主人公オリヴァーはお城で育ち名前にフォンがつく貴族の血筋(日本では公家の末裔なんて分からないのにドイツはそんな習慣残ってるのか)。自殺に見えた女性が実は他殺で、企業の粉飾決済や数々の事件の蓋が開いていく。登場人物もお金持ちが多く、サイクロプスレンズ付きのブライトリングとかマロノブラニクの靴など小物も楽しい。読んでる間はセレブ気分になれた。登場人物多いけど読む価値あります。2019/01/20