内容説明
約百年後、地球を脱出した技術者達は小惑星帯にて3Dプリンタ応用技術で小さな共同体を創っていた。だが彼らと〈二世〉及び地球との対立は発火点を超える。ハヤカワSFコンテスト最終候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
73
今回のハヤカワSFコンテストの3作品中、一番心惹かれた。驚異の進化で、食料や身体までも複製する高性能3Dプリンタ。地球を脱出した研究者に、その機器で実験的に産み出された少年少女達。機器を「母」と呼び、美しくも異形の外見の彼らの、同胞を思いやる気持ち、自分達を実験材料としか見ない「始祖」への複雑な思い、見果てぬ地球への恐れと憧れ。ハードSFの外観の中心には、痛々しくも純粋な青春の物語があった。2015/05/19
miroku
22
デザインヒューマンが主人公のサイバーパンクとでも言えば良いのか・・・。この作家のみならず、SFは新しい天地を創造しつつあるようだ。通過儀礼の物語は甘く切ない後味を残した。2016/06/25
月世界旅行したい
15
ブルース・スターリングのスキズマトリックス的な身体改造SFかな。2015/03/21
なしかれー
12
3Dプリンタが劇的に進化した未来の話。建築物から食べ物、身体まで出力できるようになった技術を用いてポストヒューマンを生み出そうと地球を飛び出した始祖。生み出された二世、新世代の反抗期的青春小説。語り手である虹の精度や都市に対する拘りが気になりながら、うまく咀嚼出来なくて悔しい。彼らの幸せはどこにあるのかな。2015/05/23
アイカワ
8
読友さんが絶賛しているのをみて読みたくなった次第。ほんとその通りでむちゃくちゃ良かった。古い世代からの離脱は希望の国のエクソダス、あやふやな未来への不安は浅野いにお漫画、そして言葉はライ麦畑で捕まえての切実さに似ている。SF的ガジェットで言えば市川春子の短編を思い出した。起点も曖昧で、存在理由も曖昧で、寄る辺もない彼らの、生きていく活力に心震えた。泣く。2016/08/06