内容説明
古代エジプトの隠遁生活に起源をもち、現代まで脈々と受け継がれてきた修道制。修道士たちは俗世から離れて共同生活のなかに神を希求する一方、写本による学問の継承、糧を得るための生産活動、女子修道院や騎士修道会の創設、海外宣教など、西欧社会に大きな影響を与えてきた。本書ではローマ・カトリック世界を中心に、その原初から近代のイエズス会の活動までを通観する。キリスト教文化をより深く理解するうえで必読の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
17
古代から近世までの修道院の歴史をまとめた一冊。手堅い内容で教科書的にも読める。宗教的な熱情を持った集まりから、規則が生まれて組織が拡充し、世俗権力と交わるなど、我が国の仏教寺院の歴史を想起させる部分も多い。「修道院」という堅いイメージとは裏腹に、その歴史は変化の連続で、各修道会の特徴も個性的なもの。王侯貴族→富裕層→一般市民と修道会に関わる人々の変遷を見れば、修道士たちが決して世捨て人なのではなく、ヨーロッパ社会の変化と確かに向き合ってきたことがよくわかる。2021/05/07
袖崎いたる
8
アントニオスという人の思想に感銘を受けた。彼によれば無学は軽蔑対象ではない。「精神が健全であり、本来的なあり方をしているかぎり、文字を必要とするものではない」(まぁ、「本来的」という表現には解釈の多様性を残すが)のだという。この考えは中世の修道院生活における「生活の美しさ」に繋がるらしい。現代的にいえば早寝早起き品行方正って感じかな?全体としては情報量からいえば多分、新書サイズでも済ませられるだろうなという印象。しかし「ザ・修道院」という雰囲気の媒体としてはよくできた本なんだと思う。資料としても有用。2015/09/02
アルゴス
6
修道院の始まりから、やがてローマ帝国でキリスト教が国教となり、皇帝によって保護され、社会のうちでも重要な役割をはたすようになる歴史が淡々と語られる。カール大帝のカロリング・ルネサンスも、修道院において細々と維持された伝統に依拠することで初めて可能になったのだった。その後のイエズス会の活動なども考察し、修道院の歴史についてはしっかりとした参考書になる。少し固すぎるきらいもなくはないのだが。2018/01/24
ユーディット
6
宗教思想カテゴリーに一応入れたけど、歴史でもある。一冊でキリスト教の起こりから近代のイエズス会までを、大きな歴史の変化の中で捉えながら紹介する。辞典的なので当然内容を深く追求したりするものではない。できる限り重要人物(ほとんどが修道士)の名と彼らの著作を年代とともに確認するのに良い。西洋修道院についての入門書としては面白くはないし、人物名が多いので不向き。研究動向も一言触れられている。ある程度知った人がまとめとして所持するのに最適か。2016/08/26
スプリント
4
純朴な隠遁生活を営む修道院から世俗権利と闘争を繰り返す修道院や十字軍に馳せ参じる宗教騎士団など様々な形態の修道院の成り立ちを理解できます。人名や地名が数多くでてくるので整理しながら読むことをおすすめします。2015/07/05