内容説明
毎朝、何者かに家の前の「カド」にお供えを置かれ、身に覚えのないまま神様に祀り上げられていく平凡な未亡人。山菜摘みで迷い込んだ死者たちの宴から帰れない女。平穏な日常生活が、ある一線を境にこの世ならぬ異界と交錯し、社会の規範も自我の輪郭さえも溶融した、人間存在の奥底に潜む極限の姿が浮かび上がる七作品。川端康成文学賞受賞。
目次
祇樹院 gijuin
迷蕨 meiketsu
門 mon
海梯 kaitei
お供え osonae
逆旅 gekiryo
艮 ushitora
著者から読者へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
67
これはまた。難しい本を読んでしまった。俺の読解力並びに理解力の乏しさが情けない。これはきっと凄い本なのだろうが、ちんぷんかんぷんで全く良さがわからないどころか何が書いてあるのかこれは日本語なのか俺は日本人なのかなんでこんな辛い思いをして読まなくちゃならんのか何もかも解らなくなって。これはそういう本です。でも、そこがいいのかも知れない。2022/03/27
かわうそ
37
日常からのわずかなずれが少しずつ増幅されて気がつけばどことも知れぬ異界に迷い込みいま自分が境界線のどちら側にいるのかすら定かではない不思議な感覚が怖くて心地よい。びっくりするぐらい面白かったです。2015/08/05
りー
37
日常と非日常の境界線をふとしたはずみに踏み越えてしまう短編七編。これはマジックリアリズムといってしまっても良いのだろうか。その非日常が特別なものとしてではなく、気付いた時には当たり前の様な顔をして手の届くところまで踏み込んできている感覚が悪夢的で実に良い。その傾向を強調するかの様にどの物語もごくごく自然な日常の一場面から始まり、山場らしい山場も無く、結論も解決もオチも無く淡々と進んでゆく。それがまた僕らのいる現実と地続きの場所で起こっている出来事の様な臨場感を生み、不穏な臨場感を生むのだ。2015/05/11
ぐうぐう
36
吉田知子の小説を読むと、じわじわと忍び寄る恐怖を覚える。表題作「お供え」は、誰かが家の前に花を置いていく話だ。主人公はそれが誰か、何故かを突き止めようとするが謎は一向に解けない。解こうとしているはずが、逆に迷い込んでいくのだ。迷うと言えば「祇樹院」は、雪乃に車で連れられた「私」がどんどんと道に迷っていく物語で、しかし初めての場所のはずが、何故か知っているような気がしてくる。やがて「私」は、理不尽な出来事に苛まれる。(つづく)2020/02/02
三柴ゆよし
36
大抵の小説には、ここを押してねというスイッチのごときものがいくつか仕掛けられているもので、読者のほうでそいつを見つけると、ポチポチと押して通る。そうすることでポイントが累積していき、成程そういうことかとわかったような気になるのだが、吉田知子の小説はそのポイントを見つけるのが極めてむずかしい。あれ今のはそうかなと思って押しても、実は全然関係ない犬の糞のようなものだったりする。つまりどこに転轍点があるのか見出せないわけで、だから吉田知子の小説を、起承転結とか序破急という既成の文法で推しはかることはできない。2015/06/07
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