内容説明
問答無用の面白さ、騙される快感!泡坂ミステリのエッセンスが詰まった名作品集。困っているときには、ことさら身なりに気を配り、紳士の心でいなければならない、という近衛真澄の教えを守り、服装を整えて多武の山公園へ赴いた島津亮彦。折よく近衛に会い、2人で鍋を囲んだが……知る人ぞ知る逸品「紳士の園」や、加奈江と毬子の往復書簡で語られる南の島のシンデレラストーリー「閏の花嫁」、大火災の実況中継にかじりつく警部と心惹かれる屍体に高揚する鑑識官コンビの殺人現場リポート「煙の殺意」など、騙しの美学に彩られた8編を収録。/収録作=「赤の追想」「椛山訪雪図」「紳士の園」「閏の花嫁」「煙の殺意」「狐の面」「歯と胴」「開橋式次第」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
137
『米澤屋書店』で絶賛されてた短編集にトライ。8編のうち「閏の花嫁」や「歯と胴」は普遍的なイヤミス感が面白かったです。でも正直なとこ全体的に大ハマりとまではならんかったかなぁ。それぞれのアプローチは何気に好みなんですが…。ハマりきれない自分がちょいと歯がゆい(^o^;)2022/01/30
紅はこべ
131
「歯と胴」は当然『歯と爪』を意識した題だろうな。『アンナチュラル』も連想。『狐の面』は『トリック』。「おまえのやったことはまるっとお見通しだ」奇術師の泡坂さんお得意分野。表題作のアリバイ工作には愕然。ミステリと恋愛を絡めるのが巧み。2018/02/18
Tetchy
97
泡坂初期の短編にはチェスタトン張りのロジックが愉しめる。それは歪んだ論理とでも云おうか、読後に奇妙な味わいを残す。本作では「赤の追走」、「紳士の園」、「煙の殺意」、「開橋式次第」がそれに当たる。かし本作は先ほど「奇妙な味わい」と述べたようにエリンの『特別料理』を意識したに違いないと思われる作品がある。『閏の花嫁』はもうほとんどオマージュであろうし、『歯と胴』は一種のホラーとも云える(題名からすればバリンジャーか)。この完成度は素晴らしい。2009/05/23
stobe1904
76
【本格名手の短編集】独立した8つの短編から構成されている。総じてレベルが高いが、個人的には『紳士の園』がお気に入りで、きれいに騙された感じがした。本格名手の短編を堪能できてとても満足。★★★★☆2018/10/11
papako
71
だんじろーさんにおすすめしてもらって。いやー、なんか好きだわ、泡坂作品。もう40年以上前の作品なのに、まったく色あせてない。好みは『歯と胴』『開橋式次第』『椛山訪雪図』『狐の面』『赤の追想』って、ほとんどでした。どれもひねりと洒落の効いた味わい深いものでした。やはり、あまり古臭くなく、読みやすい。だんじろーさん、ありがとうございました!2017/07/12