内容説明
青春=戦時下だった吉行の半自伝的小説。
昭和19年8月――、僕に召集令状が届いた。その後の入営は意外な顛末を迎えるが、戦時下という抑圧された時代、生と死が表裏一体となった不安を内包し、鬱屈した日々を重ねていく。まさしく「焔の中」の青春であった。
狂おしいほどの閉塞感の中にあっても、10代から20代の青年らしい友人との、他愛のない会話、性への欲望、反面、母への慕情など巧緻な筆致で描かれる。また、戦争とは一線を引いたかのような、主人公の透徹した眼差しと、確固たる自尊心は一貫しており、吉行自身のメンタリティが垣間見える、意欲作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
桜もち 太郎
17
作者の半自伝的小説。昭和19年、招集令状が届き、入営したものの喘息のため一日で帰されてしまった青年の物語。20歳の青年の中で死は飼い馴らすことのできなかった代物だった。大学生という立場で一人の女と付き合うことになるが、恋情は全くなく欲望のみしかない。戦争が終わり死からの解放と同時に生きることを考えなくてはならなくなった青年。歪んでゆく心の内部に頼らなくてはならない。青年の一貫した自尊心が初々しかった。こんな素晴らしい作品が埋もれていたとは。→2021/10/08
shizuka
2
絶版本が廉価版で復刻されるなんて、有難い話です。装丁もシンプルでよい。どんどん復刻してください!置いている本屋が限定されているのが難点ではありますが、足運びます。吉行淳之介はこの年になって面白さが分かるようになってきたなー。昭和の大人の遊びに興味津々。ダンディズムを身にまとうには、とことん遊ばないと、なのかな。2015/09/22
hirayama46
1
戦時中に思春期を過ごした吉行淳之介の自伝的(と言ってもいいかな)小説。戦争の悲喜を描いているものは色々とあるけれど、青春という時代と戦争を絡めているのは意外と珍しい気もします。見通しがまるできかないときにも、穏やかに懸命に生きる姿は心にじんわりとしみていきます。2015/07/14
あさとかずゆき
0
あまり戦時中という感じがしない青春小説。2021/05/15