内容説明
葬式帰りの中年男女四人が、居酒屋で何やら話し込んでいる。彼らは高校時代、文芸部のメンバーだった。同じ文芸部員が亡くなり、四人宛てに彼の小説原稿が遺されたからだ。しかしなぜ……(「楽園を追われて」)。ある共通イメージが連鎖して、意識の底に眠る謎めいた記憶を呼び覚ます奇妙な味わいの表題作など全14編。ジャンルを超越した色とりどりの物語世界を堪能できる秀逸な短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
250
『髪の毛だって、恋人の頭についていればとても愛おしいのに、離れてしまうとあんなに嫌なものってないわよね』と、そうだね、と納得してしまう〈深夜の食卓〉。『二十枚以内で』という条件下で『スプラッタ・ホラーをやってみた』という〈卒業〉。『どこからが作り話かは、ご想像にお任せする』とエッセイのような〈朝日のようにさわやかに〉など14編のホラーな世界。“ホラーなんてまっぴらごめん”という方にこそお勧めしたい”上手いな〜”という感想で終わる恩田さんのホラー。恩田さんの魅力をこれでもか!と満喫できる、そんな作品でした。2021/04/20
SJW
163
恩田さんの様々な種類の短編集。初めの「水晶の夜、翡翠の朝」は「麦の海に沈む果実」「黄昏の百合の骨」の番外編。ヨハン君のストーリーで、ゾッとする彼の一面がみられる。「あなたと夜と音楽と」はアガサ・クリスティの「ABC殺人事件」のオマージュという企画で書かれたもので興味深かく面白かった。他にファンタジー、ホラー、エッセイ(?)、意味不明な短編など盛りだくさんだった。2019/06/15
風眠
162
少し謎めいていて、ブラックで、何とも形容しがたい美しさ。誰かと比べるなんて作家に対して失礼だと思うけれど、小川洋子の描く世界観に似ていると感じた。もちろん小川洋子も恩田陸も大好きな作家なので、これは褒め言葉だ。虚と実の狭間を行ったり来たりするように、さまざまな物語がこの一冊に収められている。ファンタジー、SF、ショート・ショート、会話劇、ミステリー・・・。絞っても絞ってもまだ何かがしたたり落ちてきそうな、そんな余韻を感じさせてくれる短篇集。語り過ぎず終わるラストの余白が、いちばんの読みどころだと私は思う。2015/01/26
ダイ@2019.11.2~一時休止
128
短編集。「水晶の~」は既読。あなたと夜と音楽と・冷凍みかん何かがイイ。2017/01/07
yoshida
107
14の作品からなる短編集。最後に収録されている表題作が最も好み。掌編もあり、作品の好みは別れるだろう。異界が広がる作品もあれば、謎の事件を解き明かしたり、日常を描く作品もある。恩田陸さん独特の謎の災厄が襲う作品は安定感がある。個人的には、恩田陸さんの作品は長編が好みかな。やはり物語の厚みが欲しい。短編だと物語の厚みが足りずに飽きが来てしまう。正直、途中で読むのを断念しようと迷ったが何とか読了した。表題作は睦言の正体が意外で、なかなか読ませる。この作品が無ければ評価もかなり変わっただろう。好みの問題かな。2022/05/08